トランプ支持と根は同じ。SNSで結集する大衆の怒り、コロナ禍で勢い増す
2021年02月15日
トランプ氏去りて、トランプ主義去らず。トランプ氏がホワイトハウスを去れば全てが正常に戻り平穏な日々が回復される、というのは幻想にすぎない。
そもそも、トランプ氏は「結果」であり「原因」でない。既に米国社会に原因があり、トランプ氏はその原因から出た結果として大統領に就任した。「風邪の菌が体内で繁殖」した結果、「熱が出た」ようなものだ。4年が経過、いわば「熱は治まった」が、菌が体内にいる限りいつまた熱が出ないとも限らない。
翻って、トランプ氏登場の背景は何だったか。
米国社会における非大卒白人の没落だ。非大卒白人、それも主として中西部に居住する彼らの多くが、2000年代以降のグローバル化とIT化の中で職を失い、没落した。しかしこの層は、自分たちこそが米国を建国し、その精神的支柱のバックボーンだ、との強い自負をもつ。それなのに今や、社会の周辺に追いやられ没落の憂き目を見ている。
追いやったのは東部出身のエスタブリシュメントだ。こうして、既得権益層に対する激しい反感が巻き起こった。2016年、トランプ氏を大統領に押し上げた原動力はこの反感の力だった。
この層はトランプ氏の岩盤支持層を形作った。大統領在任中、トランプ氏の支持率が一定以下に落ちることはなかった。そして2020年の大統領選挙で、この層が核となり、7400万人もの有権者がトランプ氏に投票した。
トランプ氏によるSNSを通しての情報操作が、かくも深刻な事態を生んでいる。無論、トランプ氏の情報操作が可能なのは、それを簡単に受け入れる社会の脆弱性あってのことだ。その背景に、格差の拡大とそれに対する人々の怒りがあるのは言うまでもない。
つまり、トランプ氏が大統領に上り詰めた背景には、米国社会にある「富裕層、既得権益層への積もり積もった反感」がある。トランプ氏は、天性の政治カンを持った政治家だ。素人の不動産業者がたまたま大統領になったのではない。トランプ氏は、その類いまれな政治カンをもって人々の反感を政治的な力にまとめ上げた。
この4年、それは岩盤支持層としてトランプ氏を支え続けた。昨年の大統領選の最中から、トランプ氏は、盛んに選挙の不正を主張、それをSNSで流し自らへの支持を訴えた。ポピュリストの常套手段の行き着く先が議会乱入だった。
いずれにせよ、今もって、米国社会に「4年前と同じ反感」がふつふつと渦巻いている状況に変わりない。
1月末、米株式市場が乱高下に見舞われた。レディット問題だ。
レディットとは、2005年創設の掲示板型ウェブサイトのことだ。現在、月間利用者数4億3000万人。そのレディット内のフォーラムの一つが2012年設立のウオール・ストリート・ベッツ(WSB)で、株関連情報が頻繁に交換される。米国では、スマホを通じ少ない資金でも簡単に投資でき、若いミレニアム世代を中心とした個人投資家が盛んに株売買をしている。個人投資家の株取引プラットホームを提供するロビンフッドは取引手数料が無料ということもあり爆発的な人気だ。
個人投資家がこれに反応。ゲームストップ株に買いが殺到し、1月12日、わずか20ドルだった株価が、28日、最高値で469ドルまで跳ね上がった。
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