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既得権益層への反感~レディット問題の次に来る「マグマの噴出孔」はどこか

トランプ支持と根は同じ。SNSで結集する大衆の怒り、コロナ禍で勢い増す

花田吉隆 元防衛大学校教授

トランプ氏去りてトランプ主義衰えず

 トランプ氏去りて、トランプ主義去らず。トランプ氏がホワイトハウスを去れば全てが正常に戻り平穏な日々が回復される、というのは幻想にすぎない。

拡大トランプ氏支持者らが連邦議会議事堂の建物内部に乱入し破壊行為も続けた。大統領選の投票結果を認定する両院議員の会議が一時中断して議員や職員らは避難。暴動の結果、計5人が死亡した=2021年1月6日(Hengge/Shutterstock.com)
 1月6日の連邦議会乱入は、米国民主主義の根底を揺るがした。大統領選挙が終わり、誰の目にもトランプ氏の敗北が明らかであるにもかかわらず、それを認めようとしない勢力が連邦議会にまで乱入した。バイデン政権が発足した今日、この勢力は一向に衰える気配なく、今や、トランプ主義は米国社会に深く浸透し根を張っている。

 そもそも、トランプ氏は「結果」であり「原因」でない。既に米国社会に原因があり、トランプ氏はその原因から出た結果として大統領に就任した。「風邪の菌が体内で繁殖」した結果、「熱が出た」ようなものだ。4年が経過、いわば「熱は治まった」が、菌が体内にいる限りいつまた熱が出ないとも限らない。

社会構造が根本原因。没落層の岩盤は続く

 翻って、トランプ氏登場の背景は何だったか。

 米国社会における非大卒白人の没落だ。非大卒白人、それも主として中西部に居住する彼らの多くが、2000年代以降のグローバル化とIT化の中で職を失い、没落した。しかしこの層は、自分たちこそが米国を建国し、その精神的支柱のバックボーンだ、との強い自負をもつ。それなのに今や、社会の周辺に追いやられ没落の憂き目を見ている。

 追いやったのは東部出身のエスタブリシュメントだ。こうして、既得権益層に対する激しい反感が巻き起こった。2016年、トランプ氏を大統領に押し上げた原動力はこの反感の力だった。

 この層はトランプ氏の岩盤支持層を形作った。大統領在任中、トランプ氏の支持率が一定以下に落ちることはなかった。そして2020年の大統領選挙で、この層が核となり、7400万人もの有権者がトランプ氏に投票した。

格差への怒り、富裕層・既得権益層への反感が蓄積

拡大米大統領選の不正を信じ、結果確定後もトランプ氏の勝利を主張する人々が行動を続けている=2021年1月6日、米ネバダ州(Trevor Bexon/Shutterstock.com)
 その7400万人の過半数が、今なお、選挙の不正があったと信じる。1月6日の議会乱入は、このような有権者の存在抜きに考えられない。事件後行われた大手世論調査会社・YouGovの調査で、共和党支持者の4割以上が「議会乱入を支持する」とし、6割近くが「乱入はどちらかといえば平和的に行われた」という。CNNの調査では、共和党支持者の19%しかバイデン氏を正統な大統領として認めていない。

 トランプ氏によるSNSを通しての情報操作が、かくも深刻な事態を生んでいる。無論、トランプ氏の情報操作が可能なのは、それを簡単に受け入れる社会の脆弱性あってのことだ。その背景に、格差の拡大とそれに対する人々の怒りがあるのは言うまでもない。

 つまり、トランプ氏が大統領に上り詰めた背景には、米国社会にある「富裕層、既得権益層への積もり積もった反感」がある。トランプ氏は、天性の政治カンを持った政治家だ。素人の不動産業者がたまたま大統領になったのではない。トランプ氏は、その類いまれな政治カンをもって人々の反感を政治的な力にまとめ上げた。

 この4年、それは岩盤支持層としてトランプ氏を支え続けた。昨年の大統領選の最中から、トランプ氏は、盛んに選挙の不正を主張、それをSNSで流し自らへの支持を訴えた。ポピュリストの常套手段の行き着く先が議会乱入だった。

 いずれにせよ、今もって、米国社会に「4年前と同じ反感」がふつふつと渦巻いている状況に変わりない。

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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