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東京五輪は大胆に簡素化を~「森発言」を乗り越え今夏に開催するために

登 誠一郎 元内閣外政審議室長

行事内容の簡素化

1. 聖火リレー

 森会長が述べた「有名人は田んぼを走ればよい」は暴言であるが、確かに沿道に多数の見物人が密集することは避ける必要がある。そのためには、全国を通過するコース自体は変更しないとしても、形式と期間を大幅に修正することが望ましい。例えば、実際にランナーが走るのは一日のうち出発と到着の2区間のみとし、その間は車で運ぶことが一案であろう。これにより期間も一か月程度に短縮され、6月下旬のスタートにすることができると思われる。

2. 開花式・閉会式

 開会式の入場行進に出席する選手は各国とも旗手1名のみとし、役員は制限された人数が観客席で見守る。閉会式には選手、役員は出席せず、次回の開催都市への引継ぎ行事のみとする。

3. 関連行事の中止

 感染防止及び警備の観点から、オリンピック開催に合わせての外国賓客の訪日は一切認めない。関連文化行事も観客を集めた形では行わず、文化活動は原則として、ネット配信する。

拡大2020年3月20日ギリシャから到着した東京五輪の聖火=宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地

観客の有無

 観客を認めるか否かの問題は、大会開催の形態に大きく影響を及ぼすものであるので、まず第一に決定しなければならない。

 感染防止の観点からは、基本的には無観客が望ましい。しかしながら、オリンピックという地上最大ともいうべき巨大な国際的イベントが観客の声援なしで行われることは、いかにも寂しく、気勢が上がらない。

 また1年延期で経費が大幅に増加したことに加え、チケット収入がゼロになることによる約900億円の不足分を税金で賄うことは、国と都の財政上、大変厳しいと言わざるを得ない。

 ということは水際対策を徹底するためにも海外からの観客は認めないという苦渋の選択肢が浮かび上がる。国内在住者については、すでに販売済みのチケットを抽選で再調整して、当選者については、PCR検査やワクチン接種を条件として、競技場の収容人数の50%程度に限って認めることとしてはいかがであろうか。

 これは内外差別という批判は起こりうるが、この区別は国籍によるものではなく、あくまでも居住地別ということなので、今回のような緊急事態の対応として、ギリギリ受容されるものと信じる。またこの分のチケット収入の減収については、海外向けのネット放映の拡充などにより、ある程度はカバーできると期待される。

競技方法の調整(公道を使用する競技)

 基本的には、予定されている33競技のすべてが実施されることが望ましいが、競技が公道などの開放スペースで行われることが想定されてる種目(マラソン、競歩、トライアスロン、自転車のロードレースなど)については、観客の制限が容易ではないので、その実施方法については工夫が必要となろう。先日の大阪女子国際マラソンが周回コースで行われたことが一つの先例となる。これらの競技については、開催場所を周回コースなどの閉鎖空間に変更することが一案である。

 しかしこれからそれを模索することが困難な場合には、思い切って、コロナ感染状況が大きく改善していることが予想される来年春以降に開催を延期することが賢明ではなかろうか。勿論、その場合も東京オリンピックの一部として認めるのであり、メダル授与その他の栄誉は全く同等に扱われなければならない。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

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