森喜朗氏の後任会長人事に世界の眼~五輪組織委員会は再生できるか
「国益にとって芳しくない」事態に応えられる求心力を持つ新会長をどう選ぶのか
田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授
思いもかけなかった東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長交代。これはすこぶるつきの難題だ。森喜朗氏に代わって誰を新会長にするかだけでなく、それを誰がどうやって決めるかも、国内外の厳しい眼にさらされているからだ。
国内メディアの世論調査を見る限り、東京五輪・パラリンピックについて、新型コロナを理由として、開催の延期、ないしは中止を求める民意が大きくなっているように見える。「開催できればいいが、無理して開催すべきことではない」という声が、もはや世論の大勢であろう。
それゆえ、新しい会長人事においても、いざとなれば「中止や延期の判断ができる人」が望ましいということになる。責任重大である。

東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長辞任を表明する森喜朗氏=2021年2月12日、東京都中央区、
驚天動地の森・川淵会談
それにしても、今回の「森発言」に対する海外の世論、国際オリンピック委員会(IOC)など大会関係者、メディアの厳しい批判は驚くばかりだ。発言直後、国内ではなんとか乗り切れると見る向きもあったが、森会長が居座り続けることが可能な情勢は、あっという間に吹き飛んでしまった。
森会長自身の辞職の意向表明が遅かっただけでなく、この間の打つ手打つ手の勘違いが事態をさらに悪化させたのは明らかだ。なかでも、2月11日におこなわれた森会長と川淵三郎氏(元日本サッカー協会会長)との会談は、驚天動地としか言いようがない。テレビのニュースで見た時には、目を疑い、耳を疑わざるを得なかった。
森会長は、こんな“密室での交代劇”のシナリオが、今どき通用すると本気で思っていたのだろうか。
そもそも自らの不祥事(女性蔑視発言)によって引責辞任をする人が、どうして後継者を指名できるのか。多くの人がそう感じただろう。この一事をもってしても、森会長の反省心や薄さや今までの組織の人的支配の構図が透けて見えてきた。

東京五輪・パラリンピック大会組織委の評議員会と理事会の合同懇談会の開始前、言葉を交わす森喜朗会長(左)と川淵三郎氏=2021年2月12日、東京都中央区