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脱炭素社会の実現のカギを握る水素:世界の覇権争奪にも影響/下

米中国も巻き込んだ水素利用の世界標準化へ

塩原俊彦 高知大学准教授

脱炭素社会の実現のカギを握る水素:世界の覇権争奪にも影響/上

水素自動車

拡大Shutterstock.com

 ここで、水素を移動体(モビリティ)の動力源に利用する問題について考えてみよう。水素自動車については、「カリフォルニア州は水素経済のジャンプスタートを試みている」という「ニューヨーク・タイムズ電子版」の記事が参考になる。

 水素自動車は、大きなバッテリーを搭載した電気自動車(EV)と異なり、水素タンクと燃料電池(水素発電により電気を継続的に取り出せる装置)を搭載し、水素ガスを電気に変えて走る燃料電池車(FCV)である。「給油と加速が速く、満タンで数百マイルの距離を走ることができる」だけでなく、「排出されるのは水蒸気だけなので、公害や温室効果ガスの排出量を削減しようとしているカリフォルニア州の都市にとっては魅力的な存在だ」と指摘されている。

 さらに、記事では、つぎのように指摘されている。

 「カリフォルニア州は、自動車の免許料を通じてカリフォルニア州エネルギー委員会から年間2000万ドルの資金提供を受け、米国での発祥の地となることが決定している。カリフォルニア州は2023年末までに約2億3000万ドルを水素プロジェクトに費やす。カリフォルニア州には現在、約40の給油所があり、さらに数十の給油所が建設中である。これらの数字は、州内にある1万カ所のガソリンスタンドに比べれば微々たるものであるが、当局は大きな期待を寄せている。」

 カリフォルニア州では、全米でもっとも多い約7500台の水素自動車がすでに走行している(2015年10月に米国で販売開始されたトヨタ自動車のFCV、ミライ[MIRAI]は2018年1月に販売台数が3000台を超えたから、7500台の過半数はミライであると思われる)。この台数を州の積極的な奨励策とキャップアンドドレード(各企業に温室効果ガスの排出枠を定め、排出枠が余った企業と、排出枠を超えて排出してしまった企業との間での取引制度)による補助金プログラムによって、2030年までに5万台の小型水素自動車と1000カ所の水素ステーションのネットワーク構築が想定されている。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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