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東京五輪組織委会長の選任問題が提起している課題に正面から向き合おう

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

政府の役割・メディアの役割

 森前会長の女性差別発言問題が起きた当初から、政府は「森会長の発言は不適切」であるとしつつ、「公益財団法人の人事は組織の問題であり介入しない」「しかし透明な手続きで選定さるべき」と国会の場で説明してきた。一方、日本学術会議の会員の任命問題では6名の候補者をリストから削除したことに関しては「人事の問題なので明らかにできない」としてきた政府の立場と異なるように見える。

 もちろん法人格や設立の経緯の違いはあるが、日本学術会議のように学問の自由との関係で政府は中立を求められるケースとは異なり、5カ月先に迫ったオリンピックの組織委員会の場合には日本の国益と直結しているわけで、政府はもっと積極的に対応するべきではなかったのか。法律上組織が決めるべきことではあるし、直接的な介入をする権限はないのは明らかだ。

 しかし、国際社会は森会長の発言の背景に日本社会の問題を見ている。政府は森会長の発言が何故不適切なのか、女性の社会進出のためどういう方針があるのかどんどん発信をすべきだろう。そして後任者についてはどのような人材が望ましいかといった考え方を密室的ではなく公に示すべきであったのではないか。

拡大東京五輪・パラリンピック大会組織委の評議員会と理事会の合同懇談会前に、川淵三郎氏(右)と言葉を交わす森喜朗会長=2021年2月12日、東京都中央区

 メディアの問題も大きい。後任をめぐって森会長の要請で川淵氏が意欲を示したと伝えられるが、記者への川淵氏の発言を聞く限り、水面下の根回しで決着させようという雰囲気に満ちていた。

 しかしメディアはそれを間髪入れずに問題視したとは思われず、むしろ川淵氏は適任と飛びついたメディアの方が多かった。前会長の発言が国際社会で大きな問題を喚起したにもかかわらず、辞めていく本人が後任者を指名するという、全く常識外れなことを直ちに常識外れと指摘しないメディアの意識は不全としか言いようがない。

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。2021年3月よりTwitter開始、毎日リアルタイムで発信中。(@TanakaDiplomat)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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