岸本周平(きしもと・しゅうへい) 国民民主党衆院議員
1956年7月12日和歌山市生まれ。広瀬小学校、城東中学校、桐蔭高等学校、東京大学法学部卒業。1980年大蔵省入省、プリンストン大学客員講師、経済産業省課長、財務省課長、トヨタ自動車(株)渉外部部長、経済産業大臣政務官、内閣府大臣政務官などを歴任。2009年より和歌山1区で小選挙区4期連続当選
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「財政的幼児虐待」をやめ、世代間の公平を取り戻す良識が問われる
新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないなか、その影響を受けて苦しむ事業者や個人のいのちと暮らしを守るためには、大胆な財政出動が必要です。
少なくとも、持続化給付金や家賃支援給付金の再度の実施や要件の緩和、新型コロナ関連融資の増額、要件緩和は必要。医療や介護等に従事するエッセンシャルワーカーの皆さんの処遇を、一時的でなく改善することも重要です。特措法が改正されましたが、時短要請や休業要請に対しては、事業規模に応じた補償が必須でしょう。
ただ、その一方で、コロナ対策のための支出が、すべてワイズスペンデイング(賢い支出)と言えるかどうかは疑問です。補正予算では、コロナ対策と銘打った不要不急の予算もたくさんありました。
また、国民一人への一律10万円の給付は、緊急時に国民に現金を素早く届けるためのやむを得ない措置でした。しかし、政府内のデジタル化がお粗末で、素早く給付することができず、野村証券のエコノミストの推計では9割が貯蓄に回っています。
後知恵にはなりますが、12兆円の借金にたいして経済効果が見合っているのかどうか。コロナ禍が収束した際に第三者機関をつくって、費用対効果について検証すべきではないでしょうか。
これまでの政府の支出について、私が特に問題だと思うのは、巨額の予算を使いながら、生活困窮者への手当ては不十分な点です。実は、マイナンバー制度を前提にした給付付き税額控除の制度ができていれば、確実に生活困窮者への現金給付が可能です。
給付付き税額控除とは、一定額の減税を行い、納税していないか、納税額の少ない人には減税しきれない分を現金で給付する仕組みです。世界では、イギリスやアメリカのような勤労税額控除、ドイツ、フランスのような児童税額控除、カナダ、シンガポールのような消費税逆進性対策の税額控除があります。
日本では、消費税を10%に引上げる際、当時の民主党から逆進性を緩和する目的で、給付付き税額控除の導入が提案されました。軽減税率では逆進性は解決されない。それどころか、むしろお金持ちほど高い食料品を買うため、減税額が大きくなる不公平があるからです。
そもそも、給付付き税額控除は自公政権の提案でした。2009年以前の自民党政権下で「社会保障と税の一体改革」が議論されていた際、社会保険料負担の逆進性を緩和する方法として検討されていました。2009年、麻生太郎政権で出された所得税法等改正法附則では「個人所得税については、、、給付付き税額控除の検討を含む歳出面も合わせた総合的取り組みの中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討する」と書かれています。
今から制度設計を行い、できるだけ早く給付付き税額控除制度を立ち上げるべきだと思いますが、衆議院予算委員会で、当時の首相であった麻生財務大臣に聞いても、前向きの答えは得られませんでした。
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