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「GIGAスクール構想」への5つの懸念(上)

「ICT化は学力向上につながる」は本当か? コストに見合うか?

山内康一 前衆議院議員

デジタル教材が子どもを「観客」にする可能性

 次に教育のICT化が学力向上を阻害する可能性についても考えてみたいと思います。辻氏は次のように言います。

 学習には集中力が必要です。デジタル機器は強く視覚を刺激しますが、それが必ずしも理解を深めるとは限りません。強い刺激が思考の妨げになるからです。そのことを示唆する例を挙げましょう。

 パワーポイントは今日、広く使われているプレゼンテーションソフトです。しかし巨大IT企業アマゾンではCEOのジェフ・ベゾス氏の意向により、社内でのパワーポイントの使用を禁止しています。その理由は次のベゾス氏自身の言葉に集約されています。

 「文章を書くのは難しい。それぞれの文中には(適切な)動詞があり、それぞれの段落にはトピックがある。明確でクリアな思考がないとストーリーとして構築された6ページのメモを書くことは不可能だ。」

 ここに教育の本質が含まれています。つまりクリアな思考とは「得た情報を自分で考え、そこから構造を見出す」ということであり、「情報を整理、分析、思考してそこにある構造を浮き彫りにする」ことで物事をクリアに俯瞰することができるということです。パワーポイントはカラフルな図やチャート、グラフで受け手に強い刺激を与えますが、そのことが必ずしも受け手の理解につながるとは限りません。

 デジタル教材は、子どもを「観客」にしてしまい、子どもの関心を引くかもしれませんが、子どもの思考力を高めることにはつながらない可能性があります。

思考をめぐらせるか、思考を省略するか

 辻氏は、学習効果を上げるためには、子どもに与える情報量を少なくすることが有効

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筆者

山内康一

山内康一(やまうち・こういち) 前衆議院議員

 1973年福岡県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部国際関係学科卒。ロンドン大学教育研究所「教育と国際開発」修士課程修了。政策研究大学院大学「政策研究」博士課程中退。国際協力機構(JICA)、国際協力NGOに勤務し、インドネシア、アフガニスタン等で緊急人道援助、教育援助等に従事。2005年衆議院議員初当選(4期)。立憲民主党国会対策委員長代理、政調会長代理等を歴任。現在、非営利独立の政策シンクタンクの創設を準備中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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