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「GIGAスクール構想」への5つの懸念(下)

格差、公共性、社会統合の観点からみると?

山内康一 衆議院議員

やむを得ない事情、特別なニーズがある場合に限って

 コロナ禍の学校一斉休校によってオンライン教育や教育のICT化が一気に普及しそうな勢いですが、その制約や問題点を認識し、慎重かつ節度ある導入を心がける必要があります。無批判・無条件に「オンライン教育や教育のICT化は善」と見る姿勢は問題です。

 OECDが2018年に実施した学習到達度調査(PISA)で、日本は学校の授業におけるデジタル機器の利用時間がもっとも短いという調査結果が出ました。それを見て「日本はデジタル機器の利用が先進国で最下位なのは問題だ」と主張する人がいます。しかし、その年のPISAで日本の子どもたちの学力が最下位だったわけではありません。日本よりもデジタル機器の利用時間が長い国の多くは、日本より平均的な学力が低かったわけです。デジタル機器もオンライン教育も万能薬ではありません。

 オンライン教育は、やむを得ない事情がある場合や特別なニーズ(遠隔地の教育、障がいのある子どもの教育など)に合わせた場合に限って、慎重に導入していくことが大切だと思います。

文部科学省のリーフレット「GIGAスクール構想の実現へ」から拡大文部科学省のリーフレット「GIGAスクール構想の実現へ」から

(4)教育のICT化は「市場化」と「公共性の喪失」へ

「個別最適化」で危うくされるのは

 政府は、2016年1月閣議決定の第5期科学技術基本計画で初登場した「Society 5.0」なる概念に基づき、IoT、AI(人工知能)、ビックデータ、ロボット工学などの最新テクノロジーを活用して経済成長を実現し、社会的課題を解決することをめざしています。

 その線にそって教育のICT化が進められ、GIGAスクール構想がスタートしました。教育のICT化のキーワードが「個別最適化学習」です。これは「学習者の進度や理解度に応じて、個別に最適化した学習内容を提供すること」とされます。

 子どもたちは、PCやタブレット端末を前に一人一人の能力や適性に応じて、AIが提供する学習プログラムに単独で取り組むという学習形態です。個々の生徒の解答内容からAIが理解度を判定し、個々の生徒にとって最適な出題をすることでオーダーメイドの教育ができるという触れこみです。直観的には、算数のドリルや漢字学習のように単純な反復学習には効果的だと思います。他方、その副作用と弊害も考える必要があります。

文部科学省のリーフレット「GIGAスクール構想の実現へ」から拡大文部科学省のリーフレット「GIGAスクール構想の実現へ」から

 個別最適化された学習では、子どもたち同士の対話や相互作用はありません。目の前の端末画面に向かって黙々とキーボードを操作する教室の様子が容易に想像されます。他方、AIによって最適化された学習では、能力主義に基づいて個別化した学習プログラムなので、理解できなかったら自己責任とされる傾向が出てくることでしょう。リアルな教室での学びでは、わからない子に教師やわかった子が教えるといった相互作用もあります。しかし、デジタル端末の前に座る子どもは、自分ひとりで課題に立ち向かい、わからなかったら自分の責任とされていくかもしれません。児美川孝一郎教授(法政大学)は次のように述べます。

 すべての子どもが、簡単にアクティブ・ラーナーになれるわけではない。とすれば、Society 5.0型の学校からは、取りこぼされる子どもが多数
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筆者

山内康一

山内康一(やまうち・こういち) 衆議院議員

 1973年福岡県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部国際関係学科卒。ロンドン大学教育研究所修士課程修了。政策研究大学院大学博士課程中退。国際協力機構(JICA)、国際協力NGOに勤務し、インドネシア、アフガニスタン等で緊急人道援助、教育援助等に従事。2005年衆議院議員初当選(現在:4期目)。立憲民主党国会対策委員長代理、政調会長代理等を歴任。【Twitter】@yamauchiko1【Facebook】https://www.facebook.com/yamauchi.office/

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