花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ユーロを救った男の双肩にのしかかる新たな重い課題
政治は人間が織りなすドラマだ。人間がもつ欲望、怨恨、嫉妬、情念が複雑に絡み合い、魑魅魍魎たる世界を描き出す。そんな捉えどころのない政治も、イタリアほど人間臭いドラマとして演じられるところはない。
戦後、内閣が68回替わった。一内閣平均13カ月という短さだ。単に、選挙制度や政党制度の問題でない。人間ドラマが、これでもかというほど演じられるから、かくも短期間に内閣が入れ替わる。
そういうイタリアにあって、近来になく安定した内閣が続いた。2018年以来のジュゼッペ・コンテ首相率いる内閣だ。
しかしこのコンテ内閣、誕生の時は、これほど弱体なものはなかった。二人の実力者が譲らず、妥協の結果、第三者を連れてきた。二人の実力者とは、極右「同盟」のマッテオ・サルヴィーニ党首と「五つ星運動」のルイギ・ディ・マイオ党首。連れてこられたコンテ氏は当時フィレンツェ大学の法学部教授だった。
単なるお飾りかと思われたコンテ氏だったが、豈図らんや、思いがけず健闘する。2020年に入り突如襲った新型コロナウイルスに対しても獅子奮迅の働きをし、国民の高い評価を得た。
しかし、内閣がこのまま続くと思われたまさにその矢先、コンテ内閣は今年1月26日、突如総辞職する。事の発端は、13日、マッテオ・レンツィ元首相が率いる連立与党「イタリア・ビバ」がEU復興基金の使途に異議を唱え閣僚を引き上げたことだった。
コンテ氏は、新たな連立を模索するも失敗。このままでは国内の新型コロナの死者数が88000人を超える惨禍の中での選挙しかないという時、セルジョ・マッタレッラ大統領が最後の切札を切った。
「スーパーマリオ」こと、マリオ・ドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁を任命。金融界でスーパーマリオの名を知らない者はない。
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