松下英樹(まつした・ひでき) Tokio Investment Co., Ltd. 取締役
ヤンゴン在住歴18年目、2003年より日本とミャンマーを往復しながらビジネスコンサルタント、投資銀行設立等を手がけ、ミャンマーで現地ビジネスに最も精通した日本人として知られている。著書に「新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由」(講談社プラスアルファ新書)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
大規模ストなど、緊張がさらに強まるミャンマー。選挙で当選したNLDの議員は何をし、どう考えているのか。その一人から直接、話を聞けた。ヤンゴン在住の日系投資会社役員、松下英樹さんの緊急レポート第六弾。
松下英樹(まつした・ひでき) ヤンゴン在住。2003年より日本とミャンマーを往復しながらビジネスコンサルタント、投資銀行設立等を手がけ、ミャンマーで現地ビジネスに最も精通した日本人の一人として知られている。著書に「新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由」(講談社プラスアルファ新書)
2月1日の国軍による「非常事態宣言」発令から3週間が過ぎた。国民の抗議活動は拡大する一方であるが、全権を掌握した新軍事政権はあらゆる手段を使ってこれを抑え込もうとしている。19日には、9日に首都ネピドーで頭部に銃撃を受け重体だった20歳の女性の死亡が確認され、今回のクーデターによる最初の犠牲者となってしまった。
2月20日には、第2の都市マンダレーの造船所における「市民的不服従運動(CDM)」を取り締まっていた治安部隊が発砲し、少なくとも市民2名が死亡、45名以上が負傷した。最大都市ヤンゴンのシュエピーター地区では、夜間自警活動をしていた男性1名が、警察を名乗る男に頭部を撃たれ死亡した。
外務省は2月21日付で、ミャンマー全域を危険レベル2(不要不急の渡航は止めてください)に引き上げ、在ミャンマー日本大使館は外務報道官談話として下記の声明を発表した。
外務報道官談話:ミャンマーにおけるデモ隊等の死傷について
令和3年2月21日
1 日本政府は、ミャンマー治安当局によるデモ隊に対する発砲により、複数の民間人が死傷していることを強く非難します。また、犠牲者の御遺族に対し哀悼の意を表し、負傷者の方々に心からお見舞い申し上げます。
2 平和的に行われるデモ活動に対して銃を用いた実力行使がなされることは許されることではありません。日本政府は、ミャンマー治安当局に対して、民間人への暴力を直ちに停止するよう強く求めます。
3 また、日本政府は、アウンサンスーチー国家最高顧問を含む関係者の解放、民主的な政治体制の早期回復を改めて国軍に対して強く求めます。
平和的な抗議活動を続けている民衆の怒りも頂点に達している。ミャンマーでは占星術が盛んで、何か事を始めるときに日時を選ぶ風習がある。数千名の犠牲者が出た1988年の民主化運動の時は、8月8日に大規模なゼネスト・デモが行われたことから「8888民主化運動」と呼ばれている。2021年2月22日は2が5つ含まれていることから「22222」デモと名付けられ、大規模なゼネストが始まった
ミャンマーでは1日のクーデター発生後、抗議のためのCDMが拡大しており、行員がほとんど出勤していない民間銀行はほぼすべての支店で休業が続いている。営業を続けている国軍系の銀行では、現金を引き出す人が押し寄せているため、引き出し額の上限を設け午前中の数時間だけの営業を行っている。オンライン決済が普及していないミャンマーでは、現金不足により月末の給料支払いや債務の支払いができない企業が続出する恐れがある。海外送金業務も滞っているため、外資系企業にとっても既に深刻な問題となっている。
今、選挙で当選した国民民主連盟(NLD)の議員たちは何をしているのか?