松下英樹(まつした・ひでき) Tokio Investment Co., Ltd. 取締役
ヤンゴン在住歴18年目、2003年より日本とミャンマーを往復しながらビジネスコンサルタント、投資銀行設立等を手がけ、ミャンマーで現地ビジネスに最も精通した日本人として知られている。著書に「新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由」(講談社プラスアルファ新書)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ミャンマーの選挙制度は小選挙区制で、1つの選挙区から上院、下院、および地方政府議会議員が選出される。
日本の国会議員にあたるNLDの連邦議会議員たちは、一時的な拘束から解放された後、2月5日に独自の議会を開催、ミャンマー連邦議会代表委員会(Committee Representing Pyidaungsu Hluttaw 、CRPH)を結成した。9日にはアウンサンスーチー国家顧問の再任命を決定している。
16日、国家統治評議会(新軍事政権)は政権運営の資金確保のために、ミャンマー中央銀行に2千億チャット(約150億円)分の国債の発行を決めさせたが、CRPHがすぐに「国家統治評議会は正式に樹立された政府ではない。正式ではない政府が発行する国債は無効であり、民間銀行は購入すべきではない。損害が発生した場合は購入した者が責任を負うことになる」とコメントしたため、入札は不調に終わり、売買が成立したのは17億チャット(約1億2750万円)に留まった。SNSではCRPHこそが民意を反映した正当な政府であると訴える投稿が拡散している。
18日、友人の紹介で2020年11月の総選挙でヤンゴン地域議会議員に初当選した、ヌー・ヌー・トェさんにインタビューすることができた。2006年に京都大学大学院で修士号を取得したヌー・ヌー・トェさんは、日本語も少し話すことができる。(インタビューは英語で行った)
気さくだが、身振り手振りを交えて熱く政治を語る口調からは、長年アウンサンスーチー氏らとともに民主化運動の闘士として軍政と闘ってきたたくましさも感じられた。本来であれば選挙で選ばれた住民の代表として議会で活躍するはずだった方が、今回のクーデターをどのように感じているのか、思いを語ってくれた。
プロフィール
Myanmar News Agency (ミャンマー国営通信社) 外信部記者として勤務
京都大学法学部大学院にて修士号取得(Political Science)
Chairperson of NLD Women Committee Bahan Township(バハン地区NLD女性部長)
現、ヤンゴン地域議会議員
2020年11月総選挙にてヤンゴン市ダゴン地区よりヤンゴン地域議会議員(日本では東京都議会議員に相当)にNLDから立候補、ヤンゴンの最激戦区といわれたダゴン地区で、国軍系の連邦団結発展党(USDP)および人民さきがけ党(PPP)の有力候補を僅差で破り初当選を果たした
――まず、今回の国軍による国家非常事態宣言についてどう思っているかお聞かせください。
彼らは今回の選挙で大規模な不正があったと主張していますが、決してそんな事実はありません。実際に候補者として選挙戦を戦った私が断言します。私が立候補したダゴン地区は有権者数が1万2000人ほどの小さな選挙区です。不正があればすぐにわかってしまいます。クーデターを正当化する口実にすぎないと思っています。
――2月1日にクーデターが起きたことはどのように知りましたか?
翌日の未明にネピドーにいた国会議員から電話がありました。私の自宅には軍人も警察もやってきませんでしたが、念のために知人の家を転々としながら、電話やSNSで同僚議員たちと連絡を取り合って、情報交換をしていました。