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大村愛知県知事へのリコール署名問題は日本の民主主義を揺るがす大事件だ

極めて特異な経過をたどった運動は不可解なことだらけ

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

およそ考えられない「手付かずで保管」

 まず、「①集めた署名は、おそらくその場でチェック・集計される事はなく『手付かずで保管』された(参照)」ですが、これは高須氏をはじめとするリコールの会幹部が本当にリコールを成立させようとしていたのなら、およそ考えられない対応です。

 リコールの署名は、その書式や必要な記載事項が法律、政令で細かく決まっており、それを満たさなければ、せっかく集めても無効になります。署名を収集した段階で、署名年月日・住所・氏名・生年月日と押印をチェックしていないということは、考えにくいことです。

 今般の愛知県知事リコール運動では、署名収集受任者が、押印のない署名に自ら押印したとの報道もあり(参照)、「署名段階における押印のチェック」という初歩的かつ必須なことすら、現場で徹底されていなかった疑いは禁じ得ません(徹底されていたなら、押印のない署名があるはずがありません)。

 「署名段階で集計していない」も考えにくいことです。言うまでもなく、リコールは一定期間(2カ月)で一定数(86万6586人)の署名を集めなければ成立しません。リコールを成立させる気があったなら、86万6586人を8月25日~10月25日の61日間で割った「1日1万4206人」を日々達成できることを目指して、その日に集まった署名数を確認するのが普通だと思います。

 ほとんど1年をかけて3万件を集めた私の名簿集めでも、当然地区ごと、期間ごとに目標を定めて、其々の節目で、「今回は目標達成、今回は未達」と数字を共有し、叱咤激励しあいました。この様な集計と情報共有なしで、86万6586人の署名の収集という「大プロジェクト」を達成できるとは、少なくとも私には思えません。

 「①集めた署名は恐らくその場でチェック・集計される事はなく『手付かずで保管』された(参照)」こと自体が、高須氏を代表とするリコールの会は、そもそも最初からリコールを成立させる気がなかったか、そうでないならそうしなければならない理由があったからだとしか、私には思えないのです。

集計もせず保管場所を秘匿したまま保管は異例

 次の、「②保管に回された署名は、途中でチェック・集計されることなく保管場所を秘匿されたまま保管され続け、提出直前に集計された(参照参照参照)」もおよそ考え難いことです。

 前述の通り、リコールを成立させるつもりがあるなら、収集した署名のチェック・集計は欠かせません。まずは収集時に行いますが、時間的・場所的制約もありますので、通常の署名集めなら、署名収集から提出までの保管期間に、それ相応のスタッフを割り当てて署名のチェック・集計を行います。特にこういった名簿集めでは相当数の重複が出るのですが、これは収集時には分かりませんので、保管時にやるしかありません。

 私の名簿集めでも、当初は4万超の名簿が集まりましたが、整理したら3割近い重複があり3万になりました。重複には記憶違いによるものもありますが、多くは書く側も分かっていながら、複数の人に頼まれ、其々に書いてしまうものです。「分っている」と言っても、悪意というより「頼んでいる人の顔を立ててこの場は書いておこう。重複は事務局で整理するから問題ないだろう」などと考えてのことと思われ、それ自体責められるべきものでもありません。

 名簿を集める側としては、名簿集めを依頼した多数の人が、それぞれ同じ人に署名を依頼するくらい熱心に動いてくれているのはむしろ歓迎すべき状況ですので、重複は相当数出る前提で署名を集め、保管時にチェック・集計して実際に集まった署名の実数を管理するのが通常の在り方です。そしてその作業を行うためには、当然ながら、署名の保管場所をスタッフが共有していることが前提になります。

 防犯上の理由や個人情報保護の観点からマスコミには明かさないにしても、署名の提出時まで署名簿の保管場所を、高須院長と、おそらくは唯一の事務局スタッフである田中事務局長しか知らず、それ故当然ながら、チェック・集計が一切なされなかったというのは、極めて異例です。収集した署名のチェック・集計をする意思は、元より存在しなかったとしか考えられません。

 ここでも、「②保管に回された署名は、途中でチェック・集計されることなく保管場所を秘匿されたまま保管され続け、提出直前に集計された(参照参照参照)」こと自体が、そもそも高須氏を代表とするリコールの会は、最初からリコールを成立させる気はなかったか、そうでなければそうしなければならない理由があったからだとしか、思えないのです。

理解不能な事前チェックなし

 「③提出時まで書式のチェックがなされることはなく、選管に出して初めて書式の不備が指摘された(参照)」も、ほとんど理解ができないものです。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 衆議院議員・弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2022年衆院選に当選(新潟5区)。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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