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沖縄県民投票に「意味はあった」~あれから2年、大浦湾に潜った

「辺野古」を国際人権法から考える(前編)

阿部 藹 琉球大学客員研究員

辺野古の海を「先住民族の権利宣言」のレンズで見る

拡大アオサンゴの群集(筆者撮影)

 2月21日、汀間漁港からボートで10分ほど、埋め立てが行われる現場の対岸にある「チリビシ」というポイントからエントリーするとすぐに、見渡す限りのアオサンゴの塊が目の前に迫ってきた。「北半球のアオサンゴ群集では最大規模」と報告されている大浦湾のアオサンゴは海の中の森のようにそびえ立ち、その周りには種々の魚が泳いでいた。

 アオサンゴだけではない。チリビシの浅瀬には様々なテーブルサンゴが広がる場所がある。今回案内をしてくれたダイビングショップ「桜海」の岩本俊紀さんによれば、4年前に海水温上昇が原因とみられる白化現象が確認されたが、海の状況が良いためか今では多くが回復しているという。

 大浦湾は「20平方キロメートルという小さな場所に約5300種もの海洋生物が生息する」と言われているが、潜って見るとその生物多様性の豊かさと生命力に改めて圧倒された。(大浦湾が生物学的にいかに貴重な地域なのかはこちらの記事「希望の海で保護の網をかける」で読むことができる)

拡大浅場に広がるミドリイシ類(筆者撮影)

 続いて潜ったのは、「ハマサンゴ博物館」と呼ばれるポイント。大浦湾の出口に近く滑走路予定地の端からは約2キロだが、海底から高さ10メートルほどの「サンゴの山」が連なっていた。

 ただ、異変も起きている。岩本さんたちは定期的にサンゴ被度などを調査する「リーフチェック」を大浦湾で行っているが、去年の調査で分かったのが「テルピオス」というサンゴを覆って死に至らしめる厚さ1mmほどの黒いカイメンの増加傾向だ。詳しい生態は明らかになっていないが、専門家によれば他地域からの土砂などが入ってきた影響も考えられるという。

拡大テルピオスに一部が覆われたサンゴ(黒くなっている部分)筆者撮影

 生物多様性に満ち、生物学的に貴重でありながら危機に直面する大浦湾。この海を国際人権法というレンズを通して見ると沖縄の人々の「権利」が立ち現れてくる。

 人種差別撤廃委員会や自由権規約委員会などの国連の人権条約機関は、これまで日本政府に対し、繰り返し沖縄(琉球)の人々を「Indigenous peoples(IP)」として認め、その権利を認めるよう促してきた。(Indigenous Peoplesは日本語では先住民族、先住人民と訳される。近年は「peoples」を民族ではなく人民と訳すべきという議論もあるが、ここでは一般的な先住民族という言葉を使用する)

 沖縄の人々が国際人権法上のIP・先住民族であるならば、日本も賛成した国連先住民族の権利宣言に基づき、沖縄の人々には様々な権利が認められる。その一つが伝統的に所有、占有してきた土地、領域、資源に対する権利であり、それらを使用し、開発し、管理する権利(26条)である。一方で、国はそれらの権利を承認し、保護を与えなければならないとされている。

拡大サンゴとノコギリダイの群れ(筆者撮影)

 つまり、沖縄の人々が先住民族であるならば、豊かなサンゴのある大浦湾やその資源は沖縄の人々の固有の権利であり、日本政府はそれらの権利を承認し、保護する責任があるのだ。

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筆者

阿部 藹

阿部 藹(あべ あい) 琉球大学客員研究員

1978年生まれ。京都大学法学部卒業。2002年NHK入局。ディレクターとして大分放送局や国際放送局で番組制作を行う。夫の転勤を機に2013年にNHKを退局し、沖縄に転居。島ぐるみ会議国連部会のメンバーとして、2015年の翁長前知事の国連人権理事会での口頭声明の実現に尽力する。その後仲間と共に沖縄国際人権法研究会を立ち上げ、沖縄の諸問題を国際人権法の観点から分析し情報発信を行っている。2017年渡英。エセックス大学大学院にて国際人権法学修士課程を修了。

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