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電子化されたワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の必要性

オリンピック開催を実現したいのであれば、日本政府が考慮すべき喫緊の課題だ

塩原俊彦 高知大学准教授

 厚生労働省のひどさはその人権軽視にあることはすでに拙稿「COCOAの失態は人権軽視の日本人官僚の「腐敗」の結果か?」で指摘した。この人権軽視はワクチン接種のための特別な注射器の準備の決定的遅れにも現れている。

 2021年1月22日付「ワシントン・ポスト電子版」に掲載された「バイデンはファイザーの小瓶から余分なワクチンを絞り出したいと思っているが簡単ではない。新政権は防衛生産法を使って無駄を減らす特殊な注射器調達を検討」という記事を読んでいれば、日本の厚労省も少なくとも1カ月ほど早く、米製薬大手ファイザー製の新型コロナウイルスワクチン1瓶の接種回数を5回ではなく6回にできる特殊注射器の手配に邁進することができたはずだ。

 前厚労大臣である加藤勝信官房長官は2月16日の段階で、1瓶で6回接種可能な針と注射器の確保は「なかなか難しい」とのんきな発言をしていたのである。なお、2020年12月18日付の「デイリー・メール電子版」を注意深く読んだ心ある公務員がいれば、この問題にずっと早く気づくことができたはずである。

 こんな人権軽視の厚労省だから、電子化されたワクチン接種証明書(いわゆる「ワクチンパスポート」)の問題に対する動きも鈍い。筆者は、2020年12月15日付で拙稿「「電子予防接種証明書」がもたらす新たな「差別」」をこのサイトに公表した。一刻を争う緊急事態時だからこそ、人命にかかわるあらゆる問題に迅速に対応するのが公務員の最低限の役割だろう。ところが、この問題に対する厚労省の動きは鈍いままだ。加えて、こうした公務員を批判し、改善を求めようとする政治家も見かけない。

 そこで、ここでこの問題を改めて論じることにした。この欄で何度も繰り返してきたように、世界の潮流をよく理解し、そのいい面を適時に学び、実行に移すことこそ、パンデミック下ではもっとも重要なことであると強調しておきたい。

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バイデン新大統領の署名

 ジョー・バイデン新米大統領は2021年1月21日、「国内外の旅行におけるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の安全性推進に関する行政命令」に署名した。そのなかで、「適用される法律に従って、国務長官、保健福祉省長官、国土安全保障省長官(運輸保安庁長官を含む)は、関連する国際機関と協力して、COVID-19ワクチン接種を国際予防接種証明書(ICVP)にリンクさせ、ICVPの電子版を作成することの実現可能性を評価するものとする」と要請している。

 このICVPは、国際保健規則(1969年)の付属書に記載されている黄熱病に対する予防接種または再接種の国際証明書(いわゆる「イエローカード」)に代わって、2007年6月15日から、国際保健規則(2005年)の付属書に記載されている国際ワクチン接種・予防証明書のことである。これをデジタル化して、航空機による移動などを安全かつ円滑にする準備を検討するよう求めたことになる。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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