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電子化されたワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の必要性

オリンピック開催を実現したいのであれば、日本政府が考慮すべき喫緊の課題だ

塩原俊彦 高知大学准教授

旅行と入場許可との差に注意

 バイデンが求めたのは、パンデミック下で大打撃を受けている航空業界などを支援するために、人々の安全な移動を保証するためのワクチンパスポートをデジタル化し、円滑な利用ができるように検討することであった。ただ、このワクチンパスポートをレストラン、バー、劇場などへの入場許可に利用するといった用途も考えられる。このため、話がややこしくなっている。

 まず、「生きるか死ぬか」の死活問題に直面する旅行業界は早くからワクチンパスポートのような手段の導入を進めている。「電子予防接種証明書」に関する拙稿では、個別の航空会社が「コモンパス」(CommonPass)と呼ばれる健康パスポート・アプリの導入を推進していることを紹介した。

 これとは別に、世界の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は「IATA Travel Pass」を2021年3月までにアップルの基本ソフトであるiOSおよびグーグルの同アンドロイドで利用できるようにする予定だ。トラベルパスは、旅行者がCOVID-19試験やワクチンの認証を保存・管理できるように開発中のモバイルアプリで、旅行者が「デジタルパスポート」を作成し、検査証明書や予防接種証明書を受け取り、旅程に十分であることを確認したり、検査証明書や予防接種証明書を航空会社や当局と共有して旅行を円滑に進めたりすることができるようにするためのものである。

 ただし、世界保健機関(WHO)はいまのところ、ワクチンパスポートに熱心ではない。2021年2月5日に公表された「中間ポジションペーパー:海外旅行者のCOVID-19ワクチン接種証明に関する検討事項」には、「現時点では、WHOの見解としては、各国の当局や輸送業者は、出国や入国の条件として、COVID-19ワクチン接種の証明要件を国際旅行に導入すべきではないと考えている」とされている。

 考慮すべき問題として指摘されているのは、

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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