花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
新党首ラシェット氏、「調整型」が吉と出るか──コロナの動向も重大要因に
1月16日行われたドイツ最大与党、キリスト教民主同盟(CDU)党首選挙は、結局、ノルトライン・ヴェストファーレン州首相のアルミン・ラシェット氏が制した。9月26日に行われる連邦議会選挙後に引退が予定されるメルケル首相の跡を継ぎ、次期ドイツ首相になるまであと少しだ。しかし、今年はまだ始まったばかり。これから9月までの間、いくつものハードルが待ち受ける。ラシェット氏は無事ハードルを越え、首相の座を掴み取れるか。
元々、CDU党首選挙は、昨年2月、前任のアネーグレット・クランプカレンバウアー氏の辞任を受け、直ちに実施されるはずだったが、新型コロナの影響により1年弱もの間、延期を余儀なくされた。今回も対面での開催はかなわず、オンラインでようやく開催にこぎつけた。
3名(ラシェット氏に加えフリードリッヒ・メルツ元CDU院内総務、ノルベルト・レトゲン元環境相)が名乗りを上げ、第一回投票が実施されたがいずれも過半数に満たず、レトゲン氏を除く上位2名による決選投票にもつれ込んだ。
結果はラシェット氏がメルツ氏を53%対47%の僅差で逆転。しかし、前評判ではラシェット氏は2番手で、対立候補のフリードリッヒ・メルツ氏にリードを許していた。ラシェット氏はどうして劣勢を挽回できたか。
実は、CDU党首は代議員1001名による間接投票だ。代議員は、連邦議員、知事、市長、地方の名望家等から選ばれる。この代議員が、変化を嫌いこれまで通りメルケル路線が継承されることを望んだ。
しかし、これには党内の不満が続出する。代議員は党員の総意を反映してない、もし党員投票なら、間違いなくメルツ氏が当選していた、との批判だ。
しかし、間接選挙は得てしてそうなる。日本でも自民党が国会議員だけで選挙したり、米国が選挙人による間接選挙をしたりすれば、必ずしも自民党員や米国民の意向がそのまま反映されるわけでない。制度として間接選挙をとる限り、結果は受け入れるしかない。
さて、メルケル路線継承を謳うラシェット氏は代議員票の過半数を獲得した。といっても、結果は僅差で党内がほぼ二分、全体の半分が対立候補を支持した。これはラシェット氏にとり深刻だ。党は分裂しかかっている。
ここに第一のハードルがある。しかし、このハードルを越えるのは容易でない。党のアイデンティティーが掛かっているからだ。
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