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メルケル後継への茨の道~次期首相候補に立ちはだかる3つのハードル

新党首ラシェット氏、「調整型」が吉と出るか──コロナの動向も重大要因に

花田吉隆 元防衛大学校教授

保守政党が左旋回したメルケル時代。根深い路線対立

 CDUはもともと保守の政党だ。伝統的な価値観、家族、宗教を大事にする。

 これに挑戦状を突き付けたのが2000年に党首に就任したメルケル氏だった。

拡大2005年6月、CDUの創立60周年式典を終え報道陣に取り囲まれるアンゲラ・メルケル党首。この3カ月後の総選挙を経て、第8代ドイツ連邦首相に就任した。現在4期目で今秋に任期限りでの引退を表明している=360b/Shutterstock.com
 「今や、有権者は古い価値観に満足せず、より自由で新たな生き方を志向している。価値観は多様化し、核家族化が進行、定期的に教会に通う人は最早少数派だ」。そう考えるメルケル首相は、大胆にも社会民主党や緑の党のリベラル的政策を取り入れていく。同性婚の容認や、最低賃金の導入、原発廃止等だ。党の立ち位置の左への旋回といっていい。

 しかし、これが党内の反発を呼ぶ。CDUは保守・右派とリベラル・左派に対立、非主流となった保守派はリベラル派に対する不満を募らせていった。

 ラシェット氏がメルケル路線を継承するとは、このままリベラルの立ち位置を続けるということだ。保守派は当然面白くない。メルツ氏を代表に担ぎ、党を二分する結果となった。

 ラシェット氏が越えなければならない第一のハードルとは、この分裂を如何に食い止め、党内を一つにまとめていくかということだ。しかし、路線の違いは容易なことでは埋まらない。対立はメルケル氏が党首になってからだから20年以上続く問題だ。このハードルは手ごわい。

拡大ドイツ連邦議会のホールに掲げられた統一院内会派CDU/CSUの歴代団長の肖像写真。手前は西ドイツの初代連邦首相でCDU初代党首も務めたコンラート・アデナウアー=Mirko Kuzmanovic/Shutterstock.com

調整型のラシェット氏

 ラシェット氏は調整型の政治家だ。目標に向かって一直線に突き進むというのではなく、

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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