森喜朗さん。夫婦別姓なんてとんでもない、と言ってもらえませんか
国際的に問題だと指摘されている日本の夫婦同姓。ジェンダー平等に向けて見直しの時機
円より子 元参議院議員、女性のための政治スクール校長
森喜朗さん(東京五輪パラリンピック組織委員会前会長)の“女性蔑視”発言が国際的に大きな問題になったことで、日本の女性をめぐる状況のひどさ、「ジェンダーギャップ指数」世界121位という悲惨な現状が再認識されました。国内外からの批判に、これはまずいと森さんは会長をお辞めになりましたが、実は私は森さんが居直ってくれるといいのにと、非難されることを覚悟で考えていた人間です。
理由ははっきりしています。森さんが辞めてテレビに顔が出なくなった途端に、テレビも紙媒体も女性問題に興味を失い、ジェンダー平等などあっという間に忘れられるにちがいないと踏んだからです。もっと言えば、森さんにさらに言ってもらいたいことがあったから。
それは、「夫婦別姓なんてとんでもない」です。
世界からおかしいと指摘される夫婦同姓

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この夫婦同姓問題。実はこれもまた、何度も国際的に問題だと指摘されているのです。
具体的には、2003年、09年、16年に国連女性差別撤廃委員会が、夫婦同姓を「差別的規定」として、我が国に是正勧告を行っています。
ところが、この勧告を国会も司法も無視してきた。いや、無視といっては言い過ぎかもしれません。でも、最高裁大法廷でも、夫婦同氏を定める民法750条が、憲法14条や24条に違反はせず、合憲だとされたのです。
言うまでもなく、14条は法の下の男女の平等を定め、24条は結婚での両性の平等を定めています。最高裁の15人の判事のうち、10人の男性判事は家族が同じ姓を使う利点を強調し、形式的な不平等はないと判断しました。残る5人は違憲としましたが、この5人中、女性は3人でした。つまり、15人中3人しか女性判事がいない。まあ2割というのは、衆議院に占める女性議員の倍ではありますが……。
数の問題もさることながら、合憲と賛成した最高裁判事の男性たちが、もし結婚する時、妻となる人から、あなたが姓を変えてと言われたら、どんな気持ちになったか想像したことがあったでしょうか。たぶん、考えたこともなかったでしょうし、自分の中に、ジェンダーバイアスがあることにも気づいてはおられないでしょう。政治の世界にもそういう人は多くいますが、司法の世界も同様だと思います。