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「動物のインターネット」(Internet of Animals)に注目せよ

パンデミック対策にも活用可能

塩原俊彦 高知大学准教授

 以前、「「モノの海洋」“Ocean of Things”とは何か」という記事を公表したことがある。今回は「動物のインターネット」(Internet of Animals)について考察したい。これは、野生生物に送信機をとりつけてその動きをインターネット経由で観察し、それらを絶滅の危機から救えるかもしれないという可能性を秘めている。

 あるいは、渡り鳥の動きを知ることで、鳥型インフルエンザの病原体を本当に鳥が運んでいるのかもわかるかもしれない。コウモリの監視によって、ウイルス変異との関連も突き止められるかもしれにない。だからこそ、この「動物のインターネット」について現状を解説する必要性を強く感じた次第である。

拡大Shutterstock.com

小動物を衛星で観測するイカルスプロジェクト

 この記事を書くきっかけは、「ニューヨーク・タイムズ電子版」に掲載された長文の記事「野心的な新システムが宇宙から数多くの種を追跡し動物の動きの謎を解明することを、科学者たちは期待している」であった。

 その記事がスポットライトを当てているのは、「宇宙を利用した動物研究のための国際協力」(ICARUS)プロジェクト(以下、「イカルス」)だ。プロジェクトは2002年にスタートし、鳥やコウモリ、カメなどの小動物を衛星で観測するシステムの開発に取り組んできた。2018年8月になって、追跡システムが国際宇宙ステーション(ISS)に設置され、2020年9月に運用を開始した。

 この「イカルス」のホームページ情報によると、この運用試験は2020年3月にはじまった。技術試験段階では、イカロスシステムと動物送信機との通信をシミュレーションし、アンテナの信号強度や送信時間などが確認された。地上からいったんISSに伝送されたデータはデコードされて、モスクワの地上局に送信される。そこから、動物の移動に関する世界的なデータベースであるムーヴバンク(Movebank)にデータが転送される。

拡大カッコーの背中のミニ送信機は体重の5%以下を占めるにすぎず、2日ごとに10時間データを送信する=「イカルス」のサイトより
(出所)https://www.icarus.mpg.de/36424/original-1516959804.jpg?t=eyJ3aWR0aCI6MzQxLCJvYmpfaWQiOjM2NDI0fQ%3D%3D--18d29c0819a0e6080ee819b999c48fae93bef206
 動物にとりつける送信機の心臓部には重さ4グラムの発信器がある。これは鳥などの小動物にもとりつけられるという。この小型の測定器にはさまざまなセンサーがついており、動物の行動や健康状態のデータを継続的に記録できる。送信機は、温度や湿度、気圧などの環境条件を記録可能だ。なお、すでに蜂に太陽電池式のタグをつけて追跡することも実施されているが、タグのサイズを2025年までにわずか1グラムにまで小さくすることが計画されている。

 このサイト情報によれば、「現在、ドイツのメンミンゲンで試験的研究のために5000個の送信機が製造されている」という。2020年9月から、「イカロス」の科学者たちはこれらをヨーロッパ、ロシア、北米の黒鳥やツグミに装着し、鳥の移動行動や生存戦略を研究する予定となっている。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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