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雇用保険の過少給付問題は終わらない 謝罪を“外注”する厚労省

勤労統計調査の不正発覚から2年。今も続く追加給付。コールセンターが不満のはけ口に

山本章子 琉球大学准教授

通知書類は黄色、水色、緑色の3種類

 雇用保険等の申請窓口となり、振り込み手続きをするのは各地のハローワークだ。そこで、過去にハローワークで手続きをした人々の中から追加給付の対象、もしくはその可能性のある者が抽出され、厚生労働省からの「お知らせ」と書かれた通知書類が送られる。

 追加給付が確定している場合には黄色い書類が届き、振り込み口座の確認を求められる。

 追加給付の可能性がある場合には水色の書類が届く。ハローワークに登録された住所と、住民基本台帳に記載された住所が一致しなかったり、オンラインで雇用保険等の手続きをしたため、ハローワークに住所の登録がなかったりする場合、水色扱いとなる。追加給付対象者に同姓同名や同じ生年月日の者がいた場合にも、本人確認を要するため水色の書類が送られる。

 追加給付対象者が手続きの前や途中で亡くなった場合には、遺族に手続きを求める緑色の書類が届く。

拡大umaruchan4678/shutterstock.com

問い合わせ電話の圧倒的多数はクレーム

 厚労省名で追加給付の通知書類が送られた翌日から約2週間は、トランス・コスモスの沖縄オフィスに、問い合わせの電話がひっきりなしにかかってくるという。内容はさまざまだ。

 書類の不備に対する指摘。雇用保険等を申請した当時の記憶があいまいで、事実関係を確認したいという問い合わせ。複数ハローワークから通知書類が来たことへの相談もある。対象者の住所移転などにより、複数のハローワークから雇用保険等を給付されていた場合、各ハローワークがそれぞれ通知を出すためだ。

 こうした問い合わせへの対応は、いわば本来業務であり、トランス・コスモスのスタッフも問題なくこなしていく。問題は、問い合わせの圧倒的に多数が、「通知書類を受け取って追加給付申請をしたが、いつになったら振り込まれるのか」というものだという点にある。

 実際、2020年10月末時点で、対象者のうち給付が完了した者は全体の4割にとどまっている。そのため、「半年待たされている」「9カ月返事がない」というクレームが、トランス・コスモスの沖縄オフィスに殺到しているのだ。

 とはいえ、トランス・コスモスの業務として認められているのは、不備があった通知書類の再交付や、過去にどこのハローワークで対象者が雇用保険等の手続きをしたのか調べることだけだ。厚生労働省やハローワークの業務の進捗は把握のしようがない。“苦情”を言われても、対処のしようがないのである。

コロナ禍で業務が滞り……

 コロナの感染拡大を受け、2020年4月に国が最初の緊急事態宣言を出した際、出動制限がかかった厚生労働省だけでなく、各地のハローワークも業務を縮小あるいは閉鎖した。対象者の申請書類はいったん厚生労働省に送られて集約されるが、追加給付の振り込み手続きを行うのはハローワークだ。そこが、コロナ禍で追加給付業務どころではなくなったため、業務が滞っているのだ。

 また、クレームの中で意外と多いのが、対象者が亡くなり、遺族が代わりに申請をした追加給付の遅れへのクレームだ。本人が確認や申請を途中まで行っていても、亡くなると一からやり直しになるので、いつ給付されるのか分からないということが起きるという。

 さらに、2004年以降の雇用保険受給者が対象のため、本人が過去に雇用保険を受給したことを忘れている場合が少なくないため、詐欺を疑う電話も頻繁にかかってくるという。

拡大chainarong06/shutterstock.com

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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