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気になる情報教育の「不備」

2022年度からの高校での教科「情報Ⅰ」必修化を前に

塩原俊彦 高知大学准教授

 2022年度から高校で「情報Ⅰ」が必修科目になる。これに伴い、現在、教科書検定作業が進められている。今春には検定合格が発表され、初夏に見本送付、秋ごろに教科書の選定完了となる見通しだ。だが、「ディスインフォメーション」や「プライバシー」などの情報をめぐる諸問題を研究している筆者からみると、「情報Ⅰ」の内容は不十分であるように思われる。ここでは、せっかく情報にかかわる教育を充実しようというのだから、今後、もっとしっかり教えてほしい問題について論じてみたい。

高校における情報教育の変遷

拡大高等学校の「情報」の教科書

 高校で教科「情報」が新設されたのは2003年度であった。普通教科(現共通教科)と専門教科が設定され、普通教科に「情報A」(情報活用の実践中心)、「情報B」(情報の科学的理解)、「情報C」(情報社会への参画する態度)の3科目ができ、うち1科目を選択必修する形式だった。その後、2013年度施行の現行学習指導要領で、共通教科情報科は「社会と情報」、「情報の科学」に再編された。「「情報A」に相当する科目が消滅し、「情報 B」を「情報の科学」に、「情報C」を「社会と情報」に発展させたような位置づけとなった」という(中野由章「高等学校共通教科情報科の変遷と課題」)。これを、2022年度から施行される学習指導要領において、必修科目「情報Ⅰ」に一本化し、発展科目として「情報Ⅱ」を設けるというのである。

 学校側が科目指定を行うという状態が一般的だった結果、「社会と情報」の設置が全体の8割、「情報の科学」が2割というのが開設状況だった。そのため、プログラミングについて教えない「社会と情報」を学んで巣立つ高校生が多かった。こうした状況を改める目的で、既存の二つの科目を統合し、共通教科情報科「情報Ⅰ」ではプログラミング教育を必修としたのである。

「情報Ⅰ」で何を学ぶのか

 まず、「高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材(本編)」をみながら、その問題点について考えてみたい。

 「情報Ⅰ」は、①情報社会の問題解決、②コミュニケーションと情報デザイン、③コンピュータとプログラミング、④情報通信ネットワークとデータの活用――という4項目からなる。①では、「現在の情報技術が人や社会に果たす役割と影響、情報モラルなどについて理解する」ことを目的としており、情報にかかわる必要最低限の知識を教えようとしているようにみえる。

 そこで、「情報社会の問題解決」についてもう少し詳しくみてみよう。ここでの学習内容は、主として、Ⓐ問題を発見・解決する方法、Ⓑ情報社会における個人の果たす役割と責任、Ⓒ情報技術が果たす役割と望ましい情報社会の構築――となっている。とくに、Ⓑに関連して、「情報セキュリティ」と「情報に関する法規、情報モラル」を学習することになる。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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