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「オープン」の消えた「デジタル社会形成基本法案」

デジタル庁の深い闇

塩原俊彦 高知大学准教授

 菅直人、野田佳彦、安倍晋三、菅義偉とつづく日本の首相はいずれも閉鎖的な政権運営をはかってきたようにみえる。もっとも、日本の政権は国民への情報開示という点で「クローズド」でありつづけてきたと言うほうがずっと正確かもしれない。とくに、安倍政権以降、政権は情報公開に後ろ向きの姿勢をとりつづけている。痛切にそれを示すのが、このほど国会に提出された「デジタル社会形成基本法案」である。

デジタル社会形成基本法案にない「オープン・透明」

拡大自民党のデジタル社会推進本部であいさつをする甘利明座長=2020年10月19日、自民党本部

 政府は2020年12月25日、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を閣議決定した。そのなかで、「デジタル社会を形成するための基本原則」として、最初にとりあげられていたのは、「オープン・透明」である。もっとも大切なことだから、最初に「オープン・透明」をもってきたのであろう。そこには、「標準化や情報公開による官民の連携の推進、個人認証やベース・レジストリ等のデータ共通基盤の民間利用の推進、AI等の活用と透明性確保の両立、国民への説明責任を果たすこと等により、オープン・透明なデジタル社会を目指す」と記されていた。

 だが、今回政府によって提出された法案には、このもっとも大切な「オープン・透明」という言葉がない。「オープン」は皆無であり、「透明」は第九条と第二十九条において、「行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上」という文言のなかに使われているにすぎない。閣議で決めた「基本方針」のなかには、「情報公開」と「公開」という言葉も2回使われていたが、法案には「公開」という言葉さえない。菅政権はデジタル化によって閉鎖的な隠蔽社会をつくろうとでもいうのだろうか。

なぜ消えた「オープン」という言葉

 それにしても、なぜ「オープン」という言葉が消えたのだろう。不可思議なのは、わずか2カ月ほど前の閣議で決められたことを、いとも簡単に覆し無視する政府の姿勢である。閣議で決めたことさえ、法案に反映させないというのはどういうことなのか。おそらくきわめて意図的に「オープン」とか「公開」という言葉を削ったのだろうから、その真意を国会で徹底追及すべきだろう。

 筆者は、拙稿「デジタル化の「基本方針」を叱責する」に書いたように、閣議決定前の段階で、「デジタル社会を形成するための基本原則」の第一項目に「オープン・透明」が掲げられていた点を称賛した。デジタル化の本質はオープンな政府をつくることだと思っているからだ。

 この拙稿に紹介したように、日本政府は2011年9月に創設された「オープン・ガバメント・パートナーシップ」(OGP)というきわめて重要な国際組織に加盟していない(OGPについては拙稿「台湾に学べ:日本の遅れたデジタル・ガバメント政策」を参照)。菅直人首相の在任期間(2010年6月8日~2011年9月2日)にかかわる時期にOGPに加盟せず、それがいまでもつづいている。こんな情けない国だが、この「オープン・透明」重視をデジタル社会形成基本法のなかに位置づければ、少しはよくなるかもしれないと期待していたのだ。

 だが、残念ながら、この期待はまったく裏切られた。菅政権というのは、閣議で2カ月前に決めたことを平然と無視するのか。まったくやりきれない気持ちだ。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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