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武士の父親が子連れで奉行所に出勤~国を滅亡から救う子育てのヒントがここに

国を愛する人は最も大事なものが子どもたちであることを知っている

円より子 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

テレビ局に娘を連れて行って……

 奉行所といえば、今の裁判所です。今の裁判所で、妻が出張なので、ちょっと子どもを連れて出勤しましたという男性が現れたら、どうなるでしょうか。

 少し前の話になりますが、昭和の末期、1988年の流行語大賞に「アグネス論争」が選ばれました。歌手のアグネス・チャンさんが子連れでテレビ局に行き、林真理子さんらが、いい加減にしてよと異議を唱え、大論争に発展したのです。

 私もかつて、娘をテレビ局に連れて行ったことがあります。休日で、保育園は休み、あてにしていたアルバイトの学生も別れた夫も都合が悪くて、おとなしくしていられると言う3歳の娘を連れて行ったのです。

 打ち合わせの間、娘は一言も発しませんでした。いよいよ本番で私はゲスト席、スタジオには50人くらいの視聴者の女性たちが来ていて、その一番前の席に娘を座らせてもらい、「じっと座っているのよ。むずかしそうだったら、控え室にいてもいいのよ」と言うと、「大丈夫」と娘は答えました。ところが本番が始まる10秒前に突然、怖い顔の中年男性が娘の横に陣取ったのです。

 娘が声でもだしたら、抱き抱えてスタジオを出るぞと言わんばかりの気配を漂わせる男性の傍らで、娘は泣きそうな顔をしています。なんて、子どもの気持ちのわからない、無神経な男だろうと、思いましたが、本番が始まり、声が出せないので、必死に笑顔をつくり、娘に目で大丈夫と言い続けました。

 無事、本番が終わり、「おとなしいお嬢さんですな」と言われましたが、こちらはハラハラドキドキ。娘はもっと疲れたでしょう。「ううん、それでもママと一緒がいい。一人で待っているよりママのお仕事見ているほうがいい」と言ってくれましたが、それ以来、テレビ局に娘を連れて行かないでも済むよう、人の手当てには気を配りました。

はなから「子連れダメ」はおかしい

 そんな経験があったので、アグネス論争が起きた時には複雑な思いを抱きました。非難の目を子どもが感じるような場所に、子どもを置かないほうがいいと思う反面、子どもがいてなぜいけないのかと、江戸時代の奉行所のことを思い出したのです。

 もちろん、子どもにもよります。短い時間でもじっとしていられない子もいます。職場に誰かが子どもを連れてくることで、他人が仕事に集中できない状態にするのも良くないでしょう。そうならないよう、職場の環境整備が必要になります。

 臨機応変が大切なのであって、はなから「子連れダメ」はおかしいのでは。

子連れ出勤は女性だけなのですか?

 最近、子連れ勤務を推奨した少子化担当大臣がいました。母親が3歳まで子どもと接することは必要だし、保育園を増設する必要もないし、母親の子連れ出勤はいいと言ったそうで、すぐに反発の声があがりました。当然です。

 保育園の整備、保育士の人員確保と彼らの収入増で、待機しなくても入所できることがまず先決なのは言うまでもない。それに子連れ出勤は、東京のようなラッシュの交通機関ではとて難しい。ましてや乳幼児を連れて出勤するなど、不可能と言っていい。

 おそらく、男性国会議員のセンセイ方の多くは、赤ちゃんを抱き、おむつや着替え、時には昼寝用の布団を持ち、仕事用の鞄を下げて出かけるという経験がないのでしょう。もしかして、ラッシュの電車にも乗った経験がないとか?

 コロナ禍の今なら、家の近くにテレワークオフィスを設け、そこに子連れ出勤して、保育ママも常駐するというような仕組みをつくることもできるかもしれない。ただ、「3歳児神話」をあまりにも重要視し、子連れ出勤は女性だけなんて短絡的な思考には陥らないでほしいと思います。

 30年以上前のアグネス論争では、母親が職場に子どもを連れて行くことが問題になりましたが、今も父親が子連れ出勤するなんて、とうてい考えない社会です。無意識のジェンダーバイアスが子育てにも働いているのです。

 江戸時代には男も女も子育てをしていたのですが……。

拡大toyotoyo/shutterstock.com

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筆者

円より子

円より子(まどか・よりこ) 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

ジャパンタイムズ編集局勤務後、フリージャ―ナリスト、評論家として著書40冊、テレビ・講演で活躍後、1992年日本新党結党に参加。党則にクオータ制採用。「女性のための政治スクール」設立。現在までに100人近い議員を誕生させている。1993年から2010年まで参議院議員。民主党副代表、財政金融委員長等を歴任。盗聴法強行採決時には史上初3時間のフィリバスターを本会議場で行なった。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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