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「ワクチン外交」の裏面

特許を守る覇権国アメリカの傲慢

塩原俊彦 高知大学准教授

米国の「ワクチン外交」の露骨さ

 他方で、米国のホワイトハウスは表舞台のワクチン外交として、3月18日、アストラゼネカ・オックスフォード大学製のワクチンを数百万回分、メキシコとカナダに送る計画であると発表した。250万本のワクチンをメキシコ、150万本のワクチンをカナダと共有する(借款として供与する)ことを計画しており、「まだ最終決定ではないが、それが我々の目標だ」と報道官が明らかにしたのである。

拡大Soumyabrata Roy / Shutterstock.com

 これは、3月11日にバイデン大統領が5月1日までに全国民が予防接種を受けられると発表したことに対応している。すでに米国内で生産され、承認済のファイザー・バイオンテック製、モデルナ製、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製のワクチンを十分に確保できたから、まだ米国内で承認されていないワクチンは当面、使用する必要はなくなったとみて、近隣国に渡すことにしたわけである。平たく言えば、「自分のところはワクチンが手当てできたので、有効性に疑問の残るアストラゼネカ製ワクチンを供給してあげる」と

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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