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防衛省のメディア対応に課題 警戒心による不親切さと利害介在による不健全さ 

連載・失敗だらけの役人人生⑯ 元防衛事務次官・黒江哲郎が語る教訓

黒江哲郎 元防衛事務次官

バックグラウンドブリーフの重み

 私自身も、若手の頃にはマスコミに対して理屈抜きに強い警戒心を抱き、出来る限り接触を控えようとしていました。先輩からマスコミとの付き合い方について筋道立ててしっかり教えてもらった経験などはなかったし、まして報道対応の研修などは存在していませんでした。転機が訪れたのは、官房文書課の先任部員(課のナンバー2=編集部注)を務めていた頃でした。

 当時官房長だった先輩が、「記者との接触を怖がる必要はない。マスコミと付き合う際に大事な点は、記者が知りたいことを隠すのではなく、知りたいことを正しく伝えることだ」と教えてくれたのです。当時はまだ報道官のポストも設けられていなかったため、官房長は大臣会見に立ち会うだけでなく、自らも会見を行っていました。仕事柄、記者との懇談なども頻繁に行っていたことから、その経験を教えてくれたのでした。

※写真はイメージです

拡大藤田直央撮影

 彼によれば、「記者クラブを見ていると、マスコミ各社の記者は平均して1年くらいずつしか在籍していない。役人だって、一つの仕事をきちんと身に付けて一人でこなせるようになるには普通2年くらいかかる。それと比べれば1年はかなり短い。記者たちは、その短い期間のうちにもしかすると初めて聞くような問題についても正確な記事を書かなければならない。その際に、役所から抗議を受けるような誤った記事は絶対に書きたくない。だから必死に取材して、正しい内容を書こうと努力しているのだ。我々は、バックグラウンドブリーフィングという形で基礎知識を丁寧に教えてあげることで、その努力を助ければ良いのだ。記者との付き合いについて特ダネを渡して恩を売ることだと勘違いしている人もいるが、そんなのは邪道で論外だ」とのことでした。

 たまたまこういう指導をしてくれるような上司に巡り合えたのは、幸運だったと思います。それ以来、記者の人たちに素っ気ない対応をするのではなく、出来るだけ丁寧なバックグラウンドブリーフィングを行うよう心がけるようになりました。

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筆者

黒江哲郎

黒江哲郎(くろえ・てつろう) 元防衛事務次官

1958年山形県生まれ。東京大学法学部卒。81年防衛庁に文官の「背広組」として入り、省昇格後に運用企画局長や官房長、防衛政策局長など要職を歴任して2017年退官。現在は三井住友海上火災保険顧問

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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