長期政権の劣化を露呈、与党はずしの連立構想が浮上
2021年03月28日
3月14日に行われたドイツ西部二州における州議会選挙は、メルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)にとり衝撃的な結果となった。
元々、両州とも対立政党が政権を握る。従って、負けてもともとであり、大敗さえしなければいいというものだった。しかし現実には、まさにその大敗を喫した。
CDUのバーデン・ビュルテンベルク州での得票率は24%で、前回2016年より約3ポイント少なく、第一党となった緑の党の32%に大きく水をあけられた。もう一つ、ラインラント・プファルツ州では28%だったが、これも前回より約4ポイント減らし、第一党の社会民主党(SPD)の36%とは8ポイントもの開きがある。CDUの得票率は、ともに過去最低だ。
CDUの新党首アルミン・ラシェット氏にとり、今回は初陣だった。選挙は、この新党首の下でCDUがどれだけ戦えるかを占うものだったが、有権者のラシェット氏に対する評価は厳しかった。
ラシェット氏では、CDUがこれからどうなっていくのか、明確なイメージを描けず不安だとの有権者の声を前に、CDU内では、これで9月の連邦議会選挙が戦えるのかと危惧する声が出始めた。
各党はこれから首相候補を絞り込んでいく。CDUが、ラシェット氏では勝てそうもないとすれば別の候補を立てていくしかない。
有力なのが姉妹政党、キリスト教社会同盟(CSU)の党首、マルクス・ゼーダー氏で、同氏の国民の人気は高く、有力候補であることは疑いようもないが一抹の不安がないでもない。これまでCSUの候補で戦って一度も勝利したことがない。今回、同じ轍を踏むわけにはいかない。
しかしここにきて、今回の選挙の意味するところは、首相候補の調整問題だけに止まらないのではないか、との見方がでてきた。
今後、CDUの凋落と緑の党の躍進という今回の流れが加速していくようであれば、連邦議会選挙も影響を受けないではいられない。
これまで、9月の選挙後に関し、誰もが、第一党のCDUと第二党の緑の党による連立政権を予想していた。しかし、場合によっては、この見方は修正しなくてはならないかもしれない。では、一体どういう連立の組み合わせがあり得るのか。
ここで、急速に浮上してきたのが、「信号連立」の可能性だ。信号連立とは、緑の党、SPD(シンボルカラー、赤)にビジネス重視の自由民主党(FDP、黄)を加えた「緑赤黄」連立をいう。
今、大方の世論調査で、CDUは急速に支持率を失いつつあるが、これがこのまま続き、代わって緑の党が躍進するようなことがあれば、選挙後の連立交渉をCDU抜きですることもあり得ないことではなくなる。CDUを外し、2位以下による連立の可能性だ。
無論、緑の党とFDPとは立場にかなりの隔たりがあり、交渉は容易でないかもしれない。しかし妥協が不可能というわけでもない。現に、ラインラント・プファルツ州では、この組み合わせで政権運営が行われている。
変化は気候変動問題への政策に止まらない。公共投資や財政赤字に対する基本姿勢や、場合によっては中露への対応も変わる可能性がある。ドイツ政治の変化はドイツ国内に止まらず、欧州全体に波及していくだろう。
つまり、この選挙の持つ意味は、今後のドイツ政治並びに欧州全体の動きを占う上で極めて重要ということだ。今や、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください