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反知性主義の極みをさらけ出す五輪聖火リレー

「主権者のいない国」の空虚はもうこれ以上隠せない

白井聡 京都精華大学人文学部専任講師

五輪を批判できないジャーナリズムの自殺

 東京五輪2020におけるこうした惨状をもたらしたメディアの責任について問いたい。マスメディアの権力への迎合・劣化とマスコミ企業の経営危機の深刻化は、すでに長い間叫ばれている。7~8割の国民が愛想を尽かしてきているこの醜怪な祭典もどきをマスメディアがいまだに正面から批判できないのだとすれば、それは、五輪報道で怯懦と迷妄をさらけ出したことによって、いよいよ「無用」の烙印を購読者たちから押されるかもしれないし、そうなるべきなのである。

 新型コロナ・パンデミックの収束目途が立たないなかで、本年7月23日に東京で五輪が開催できるという筋書きが実現困難であることは、誰の目にも明らかだ。主催者・政府は、すでに外国からの観客の来場を諦めた。これは、五輪に関連したインバウンドへの期待が消滅したことを意味する。

 しかし、大会開催の困難さが増すなかで、予算だけは順調に肥大化を続けた。昨年12月22日には、大会組織委員会は追加経費を含む最新の予算見積もりを発表し、総額は1.64兆円という数字が出てきた。だが、この巨大な数字すらもまやかしにすぎず、別枠の予算、関連経費などを含めると、東京五輪に投じられるカネは計3兆円以上だと言われている。巷ではコロナ危機による失業者が増え、コロナ治療のために心身をすり減らしている医療従事者たちがボーナスカットに遭っている真っ最中にこんな数字が語られている光景は、まったくもって異様と言うほかない。ゆえに、国民の五輪への感情は、

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筆者

白井聡

白井聡(しらい・さとし) 京都精華大学人文学部専任講師

1977年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。専攻は政治学・社会思想。著書に『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版)、『未完のレーニン――〈力〉の思想を読む』(講談社選書メチエ)、『「物質」の蜂起をめざして――レーニン、〈力〉の思想』(作品社)『国体論――菊と星条旗』(集英社新書)。共訳書に、スラヴォイ・ジジェク『イラク――ユートピアへの葬送』(河出書房新社)、監訳書にモイシェ・ポストン『時間・労働・支配――マルクス理論の新地平』(筑摩書房)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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