黒江哲郎(くろえ・てつろう) 元防衛事務次官
1958年山形県生まれ。東京大学法学部卒。81年防衛庁に文官の「背広組」として入り、省昇格後に運用企画局長や官房長、防衛政策局長など要職を歴任して2017年退官。現在は三井住友海上火災保険顧問
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
連載・失敗だらけの役人人生⑰ 元防衛事務次官・黒江哲郎が語る教訓
自分はどちらかというと温厚な性格だと思っていますが、この連載に当たり過去を振り返っているうちに、結構先輩たちと喧嘩していたことに気づきました。この連載の冒頭で書いたように天邪鬼だった上に、生意気で跳ねっ返りでもあったのでしょう。こちらから売った記憶はありませんが、先輩から理不尽な喧嘩を売られたら迷わずに買っていました。
法規課主任時代に、立法作業の修羅場を終えてやっとの思いで法案を国会に提出した直後、ある先輩から「君らは法制局で降りてばっかりいたらしいな」と言われ、「誰がそんな事を言ってるんだ?」と言い返しながら胸ぐらをつかもうとして周囲の人に止められました。私には体育会系のDNAがあるので目上の人には99%敬語を使ってきましたが、この一件は乱暴なタメ口をきいた数少ない例でした。
大臣秘書官時代には、ある先輩課長に呼びつけられて大臣の部隊視察日程に因縁をつけられたことがありました。この時は、激しく(敬語で)反論し、無理な主張を引っ込めて頂きました。
防衛政策局長の時には、平和安全法制の案文について先輩幹部と激論を交わしました。条文を巡る議論なので必ずしも理不尽な喧嘩だった訳ではありませんが、目撃した後輩には「ゴジラ対キングギドラのようだった」と言われました。どちらがゴジラだったのかは聞き忘れました。
若い人たちに喧嘩を奨励するつもりはありません。しかし、冷静に考えてどうしてもおかしいと思ったら、相手が先輩でも正々堂々と(敬語で)反論すればよいと思います。独りよがりではいけませんが、正当な反論はプロフェッショナリズムの表れでもあります。もちろん、先輩風を吹かせて後輩に意味のない喧嘩を売ったりするようなことは論外ですので、十分気を付けなければなりません。
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