後藤田正純インタビュー/下
2021年04月16日
地方政治の劣化について話を聞いた「後藤田正純インタビュー/上」に続き、後半では貧困対策や労働問題に取り組んでいる国政を中心に語ってもらった。(木下ちがや)
後藤田 僕のことをよく知っている人は「おまえは民主党よりも革新系やな」といいますよ。僕がそこらの野党議員よりもずっと労働問題に力を入れてきたということは、組合も認めたがらない。僕は連合に推薦依頼だそうと思ってるくらいです(笑)。全体としてみればたしかに自民党は企業寄りだろうと思われているでしょうが、一個人として見てほしい。政党政治だからたしかに党派を選ぶわけだけれど、その中でも与党になったときにはちゃんとブレーキになる人が必要でしょう。
夫婦別姓についても党の世話人として関心を持っていますが、個人の尊厳が認められない国は何なんだって話でしょう? そういう意味じゃ、徳島では僕以上にリベラルな政治家はいないと自負してます。亡くなった仙谷由人さんは僕の親父(後藤田圭博)の葬式に来てくれました。親父は僕が選挙に立つ前は、仙谷さんを応援してました(笑)。親父は東大の医学部闘争でつかまった男なんですよ。僕のことを本当に知っている人は、反体制というわけじゃないが、僕のことも「左め」に見ていますね(笑)。
――後藤田さんはクレサラ・商工ローン問題を取り組み、2006年には貸金業規正法改定に抗議して政務官も辞任されています。07年には「反貧困助け合いネットワーク」にも参加された。いまのコロナのなかでまたリーマン危機のような問題が起きています。リーマンのときは後藤田さんは自民党で、野党の側とも一緒にやったわけですが、その経験をふまえて今回のコロナ禍に何がいえるのかということも聞いてみたい。
後藤田 サラ金問題だけでなく、自民党の中でずっと労働問題をやっていて党の中に雇用調査会をつくって初代事務局長をやりました。消費者庁をはじめて作るときも党の消費者問題調査会の初代事務局長。ものを売る人、買う人の間では買う人の方が圧倒的に弱者です。情報の非対称性があって消費者はどうしても弱いのだから、消費者問題は大事だと言い続けてきました。銀行問題もサラ金問題も、貸す側が圧倒的に強いんです。労働問題も労使においては使用者の方が圧倒的に優越的な地位にあるわけですよ。だから労働問題もずっとやってきました。政治家になった志というのもそう。「ため息を聞き漏らすな」「表情の変化を見逃すな」というのが、今も私の基本です。
――リーマン後に政権交代があって、さらに安倍政権が生まれた。その中で後藤田さんは、はっきりいって「沈黙」を強いられてきた状態だったのではないですか。リーマンショックのあと、後藤田さんはある種、自民党の「異端児」として活躍されていたのではないかと思うのですが・・・
――野党の幹部の人からは、「後藤田さんはいいことを地道にやっているんだけども、自民党ではそうではない人が主流になっていてきついんじゃないか」とも聞きました。
後藤田 それはそれで、いいんじゃないですか(笑)。サラ金規制だって社会福祉法人改革だって、それが評価されていないって同情して下さるのはいいけど、別に僕にとってはどうでもいい話です。クレサラ問題のときは、タクシーに乗ったときタクシーの運転手さんから、「あなたのおかげで助かった」ということを何人もの人から言われました。それでいいんです。
僕は自分が何かをしたからといってそれで肩書を得ようとか考えていません。肩書なんかなくてもできるんですよ。だってぶっちゃけ、歴代大臣はサラ金規制など何もしてこなかった。全部役人の引いた線路で役人の書いた答弁させられて。もし僕が文科大臣だったら、いじめを絶対になくすって最初に宣言しますよ。「何になるか」ではなく、「何をするか」が大事です。
――長い時間軸でいまをとらえる必要があると思います。僕らからみたら、後藤田さんは小泉政権の新自由主義改革に対抗するというイメージがあったわけです。いまのコロナ危機の状況で、当時の「格差」「貧困」という問題が再び政治的な争点としてあがってきていますよね。自助か公助かという話は置いておいて、当時の反貧困の取り組みや問題意識から現状をどのように見ていますか。
後藤田 あのときには自民党に雇用調査会をつくって、派遣切り防止のために対象を拡大した「雇用調整助成金」が相当うまく働いた。いまのコロナ対策貧困問題、労働対策では、全業種にわたってたびかさなる特例をつくって労働者を守っています。
――あのときの成果であるわけですよね。
後藤田 そうです。派遣切りについての対応から反省して生まれたわけです。今回も経営者ではなく労働者本人が申請すればいいようにするなど相当にグレードアップした弱者対策になって
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