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アメリカのワクチン接種はなぜ急速に進んだのか?

日本が学ぶべきヒント

佐藤由香里 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 研究員

拡大新型コロナウイルスのワクチンの接種=2021年2月19日

3)大規模サプライチェーンの整備

 開発されたワクチンは大規模のサプライチェーンに乗せて一斉に対象者に届けなくてはならない。そうしたロジスティクス(物流)の面では、国民約3億人に行き亘るための①製造(manufacture)、および②配布(distribution)にかかるボトルネックを突破したことが、アメリカの最大の成果だったと言える。

 米国では、①製造キャパシティの拡大・整備は企業努力でどうにか補えるものの、②配布・配送キャパシティの整備と拡大に関しては、現場スタッフや行政(連邦・州・地方自治体)との密接な連携が求められるため、より多くの挑戦が山積した。

【①製造】例えば、モデルナ社の場合、数多くの組織と戦略的パートナシップを組むことで製造ラインの追加、機器の手配、生産の効率化、医薬品クオリティ・コントロール機能強化、数百名の人員の追加確保を行った。結果、2021年2~3月に毎月3,000万~3,500万回分のワクチンを製造、4~7月には毎月4,000万~5,000万回分製造可能な製造ラインの確保に成功している。

【②配布】トランプ政権時代には、ワクチンの配布プロセスにおいてワクチンの接種数が2週間で約210万回に留まったことに批判が相次いだ。CDCのアドバイザーは当時を振り返り、バイデン政権発足以降(2021年1月20日~)はホワイトハウス直下の新型コロナ関連供給支援チーム主導で膨大なデータを纏め、ワクチン接種に必要な機器・物資確保の援助等を開始したことがサプライチェーンの円滑化と配送の改善に大きく寄与したと述べている。米国のエキスパート達は概して、「ワクチンの種類、数量、温度管理、保管可能期間と接種場所、接種対象者情報をベースに、需要と供給のマッチメイキングを綿密かつ的確に行うことが、円滑な集団接種へのカギ」とコメントしているので、日本でもなんらかのヒントになれば良いと思う。

4)収容・人的キャパシティ

拡大カルフォルニア州立大学ロサンゼルス校の駐車場を利用した大規模なワクチン接種会場。住民たちは車で列をなして順番を待っている=2021年2月17日(Ringo Chiu/Shutterstock.com)
 地域の医療施設における慢性的な逼迫状態に鑑みると、外部施設と人員の大幅増強が集団ワクチン接種に不可欠となる。

 例えば米国だと、カリフォルニア州やニュージャージー州などのように、集団接種のために“メガサイト”と呼ばれる広大な敷地を利用し、ドライブスルー方式などで一日数千人にワクチン接種を提供する特設会場を設置する州がある。

 更に全国チェーンのドラッグストア、可動式のモバイル・ワクチンセンター、また24時間体制のセンターなどで接種が受けられる施設も充実し始めており、人員の増強・確保には、連邦政府が一時的に公的医療機関スタッフや元医師(免許失効後5年以内)、医療系学生、薬剤師、獣医師らがワクチンの注射を行えるよう特別認可するなどしている。

大リーグ・ニューヨークヤンキースの本拠地ヤンキースタジアムもワクチン接種会場となった=2021年2月6日(The Curious Eye/Shutterstock.com)拡大大リーグ・ニューヨークヤンキースの本拠地ヤンキースタジアムもワクチン接種会場となった=2021年2月6日(The Curious Eye/Shutterstock.com)

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筆者

佐藤由香里

佐藤由香里(さとう・ゆかり) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 研究員

カルフォルニア州立大学で学士号(国際関係論)、ワシントン・セントルイス大学で理学修士号(公衆衛生学・MPH)取得。米国中西部の地域病院プロジェクトマネージャー、在米デンバー総領事館専門調査員(政治・経済・広報文化)など8年間の米国生活を経て2019年7月に帰国。同8月より現職。注力テーマは米国の内政・選挙、公衆衛生、社会問題。国際戦略研究所ウェブサイト『考』に分析レポートを掲載。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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