ポスト・コロナの展望をひらく意義のある「政治転換」を実現するために
2021年04月11日
参院広島選挙区の再選挙と参院長野選挙区の補欠選挙が4月8日、告示された。衆院北海道2区補選も13日に告示される。いずれも25日の投開票される国政選挙がはじまることで、年内には必ずある次の衆院選への関心も高まってきた。焦点は、いつ衆院を解散するかだが、ここにきて、「首相『春解散』を見送り」という報道も出ている。
現在の衆院議員の任期満了日は今年の10月21日。そして、菅義偉首相の自民党総裁としての任期は9月30日で満了となる。つまり、それまでには衆院選と自民党総裁選が実施されるのだが、有権者からすれば、これは「ポスト・コロナ」の日本の政治に新しい展望をひらく絶好の機会だとも言える。
さて、自民党総裁選はさておき、衆議院の解散・総選挙の日程の選択は、すこぶる限定的だ。というのも、①新型コロナウイルス感染状況、②東京五輪・パラリンピック、③中国を巡る情勢――という、いずれも変動含みの三つの課題によって、日程が強く制約されるからだ。
まずは、東京五輪が開催される予定の7月23日から8月8日までは除外される。仮にコロナ感染の急拡大などによって開催が不可能になったとしても、そんな状況であれば、当然、衆院選も実施できない。
とはいえ、与党・自民党にすれば、三木武夫政権以来となる任期満了での総選挙は、なんとしても避けたいだろう。首相の専権事項である「解散権」を行使できないようだと、政権は「死に体」とみなされかねないからだ。
もし、9月末に菅氏以外の自民党総裁が誕生し、10月に新首相が選ばれるなら、常識的に考えて、任期満了の選挙しかない。
ところで、その五輪だが、メデイア各社の世論調査をみると、民意はコロナ禍の中での東京五輪の開催に極めて厳しい目を向けているようだ。延期、ないし中止を望む人が、7、8割を占めることが少なくない。
それだけに、五輪を強行することでコロナ感染がさらに拡大するような事態になれば、その後の政権運営が窮地に追い込まれるのは必至だろう。五輪開催が政権支持率を高めることがあるとすれば、それは五輪開催中にコロナ感染が劇的に減少したときに限られる。
結局、菅首相が自民党総裁選で再選を果たし、現在の与党体制を継続させるためには、東京五輪の前、今から7月中旬までの衆院解散・総選挙という日程に絞られてくる。ただ、この期間だと、コロナの感染状況やワクチンなどのコロナ対応への評価によって、投票行動が強く左右されるから、なかなか悩ましい。
推測するに、菅首相が“春解散”を考えていたとしたら、それは就任以来の最大の晴れ舞台である日米首脳会談に格別の効果を期待したからではないか。アメリカを訪問して、バイデン大統領と初の首脳会談に臨む。この会談は、大統領にとっても、主要国首脳との初の会談である。日本はもちろん、世界が一斉に注目する政治イベントである。世論に与えるインパクトは、「令和おじさん」のときの比ではない。
この会談で、尖閣問題や気候変動、TPP(環太平洋経済連携協定)などで日米両国が新機軸を打ち出すことができれば、直ちに衆院解散・総選挙を断行する。それが、首相の描いた政治日程ではなかったか。
しかし、ここにきて雲行きが怪しくなっている。
コロナ禍は収束に向かうどころか、感染力の強い変異株の感染拡大で「第4波」の襲来が現実味を帯びてきた。さらに、感染対策の「切り札」であるワクチン接種も、思うようにははかどっていない。そんなときに解散・総選挙をすれば、有権者から袋だたきにされるだろう。
くわえて、4月16日に予定されている日米首脳会談も、日本の思惑通りにはいかないおそれが出てきている。
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