メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

日米同盟は「経済安全保障」の時代へ~菅・バイデン共同声明で鮮明に

「経済安保」の重要性に目覚めた日本のこれまでの歩みと今後の展望

井形彬 多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授・事務局長

 菅義偉首相とバイデン米大統領の初の日米首脳会談が4月16日(日本時間17日未明)、行われた。ここで日米が発表した「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」と題する共同声明は、北朝鮮問題や気候変動対策、ミャンマー問題など、様々な要素を含んだ包括的な内容となっている。

 なかでも目を引くのは、「中国」を意識した要素が多い点だ。この部分をまとめると、大きく分けて三つの側面に分けることができる。すなわち、(1)軍事力など伝統的な安全保障の側面、(2)経済安全保障の側面、(3)人権や民主主義といった価値観の側面――である。

拡大日米首脳会談後の共同会見に臨む菅義偉首相(左)とバイデン大統領=2021年4月16日、ワシントンのホワイトハウス

経済安保関連の政策が多数入った共同声明

 (1)の伝統的な安全保障の側面に関しては、「台湾」に言及されたことなどがメディアでは大々的に取り上げられているが、実は先月行われた日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)で確認された内容とほぼ同じだ。もちろん、両国のトップがこのメッセージを改めて発信したことに意味はあるが、あくまで既定路線の確認に過ぎないとも言える。

 また、(3)の人権や民主主義といった側面では、新疆ウイグル・香港などの人権侵害問題に言及しているものの、あくまで「懸念の共有」と中国に「直接懸念を伝達」するという内容に留まっている。

 昨今、多くの民主主義国がその制定・実施を進め、日本でも超党派の議連が立ち上がり(参照)、検討が始まっている、「人権侵害を理由にピンポイント制裁を行う」ことを可能にする「日本版マグニツキー法」の制定を促すような「行動を伴う協力」を示唆する内容は、少なくともこの声明文には含まれていない。

 その一方で、(2)の経済安全保障の側面に関しては、まさに注目すべき重要な新たな政策が多数入っている。

 具体的には、半導体を含むサプライチェーンの連携や、知的財産保護に向けた協力、次世代通信システムである5Gから信頼できない事業者を外すことの確認や、バイオテクノロジー・AI・量子科学などの先端技術における研究開発協力等、かなり踏み込んだ経済安保に関わる内容が多く含まれている。

 過去の日米首脳会談において、ここまで「経済安全保障」に関わる内容が含まれたことはない。今回の共同声明文が謳(うた)う「新たな時代における日米同盟」とは、「経済安全保障の時代における日米協力の新たな幕開け」と言っても過言ではないだろう。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

井形彬

井形彬(いがた・あきら) 多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授・事務局長

米国シンクタンクのパシフィック・フォーラムSenior Adjunct Fellowや、国際議員連盟の「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」経済安保政策アドバイザーを兼務。その他様々な立場から日本の政府、省庁、民間企業に対してアドバイスを行う。専門は、経済安全保障、インド太平洋における国際政治、日本の外交・安全保障政策、日米関係。

井形彬の記事

もっと見る