メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

本当は減っていない日本の交通事故~統計数字が暴く見せかけの安全神話

交通事故は本当に減っているのか?(上)

斎藤貴男 ジャーナリスト

「交通戦争」時代を超える状況

 走行中の携帯電話が野放しだった恐怖については、かなり力を入れて書いたことがある(拙稿「普及する携帯電話 軽くなる命」〈『バブルの復讐 精神の瓦礫』講談社文庫所収、2003年〉)。だが、死傷者数の問題は、専門家ではない筆者にはハードルが高すぎた。それが、昨年末、疑念の少なくとも一部は的外れでなかったことがわかったのだ。

 証明してくれたのは、日本損害保険協会の元職員で、現在は保険評論家の加藤久道氏(1947年生まれ)の手になる『交通事故は本当に減っているのか?』(花伝社)だ。それによれば、交通事故による死者数は確かに減っていると思われるが、負傷者を合わせた死傷者数は決して減ってなどいない、実質的には「交通戦争」時代を超える状況だ、という。

 それが本当なら、またぞろ“統計偽装”ということか。帯にあった〈衝撃の事実〉ではないか。加藤氏に会って話を聞いた。

事故統計と自賠責保険の支払い件数が乖離

拡大〈表〉交通事故統計数値と自賠責保険支払件数および事故件数乖離率(『交通事故は本当に減っているのか?』から)
--衝撃の事実とはどういうことでしょう?

 「警察庁交通事故統計と、自賠責保険の支払件数の乖離(かいり)が、この13年ほどの間に、著しく拡がっているんです。自賠責というのは法的に加入が義務付けられている、いわゆる強制保険ですね。
 支払いベースですから、事故の発生時とは時間差があり、イコール当該年の事故件数ではない。しかし一定の傾向を示すことは確かで、結果的に警察庁の統計と近似値になるはずのもの。実際、死亡件数は以前も現在も、ほぼ同様の数値です。統計の数字を自賠責の支払件数で割った『乖離率』が、常に1.0前後で推移している。
 負傷者の場合はまったく違う。自賠責では『傷害件数』と言いますが、2006年頃までは死亡件数と同様に、警察統計との乖離率が1.0前後だったのに、07年に0.89となって以来、みるみる乖離が進んでいきました。2010年に0.79、13年0.65、17年0.51と来て、18年ではなんと0.48。なにしろ自賠責の支払件数109万7004件に対して、警察統計の負傷者数は52万5846人にしかなっていないのですから。警察庁の統計は交通事故の実態を反映していないということです」(〈表〉参照)

--おかしな、というか、いささか異常な話ですね。どうして、そんなことに?

・・・ログインして読む
(残り:約1637文字/本文:約3842文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

斎藤貴男

斎藤貴男(さいとう・たかお) ジャーナリスト

1958年、東京生まれ。新聞・雑誌記者をへてフリージャーナリスト。著書に『決定版 消費税のカラクリ』(ちくま文庫)、『ちゃんとわかる消費税』(河出文庫)、『戦争経済大国』(河出書房新社)、『日本が壊れていく――幼稚な政治、ウソまみれの国』(ちくま新書)、『「東京電力」研究──排除の系譜』(角川文庫、第3回「いける本大賞」受賞)、『戦争のできる国へ──安倍政権の正体』(朝日新書)など多数。

斎藤貴男の記事

もっと見る