メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

福島県から聖火リレーがスタートして

[235]鳥取砂丘、平井伸治知事、東京五輪反対デモ、「子午線の祀り」……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

3月24日(水) プールに行き、ほんの少しだけ泳ぐも体調が万全ではないのでやめる。今週は東京オリンピックの聖火リレーがスタートするので、オリンピックをめぐって前半の特集を組むことになった。それで東京在住の海外特派員たちの考えを聞くことになって、知り合いの「フィガロ」紙レジス・アルノー記者に加えて、イギリスの「タイムズ」紙支局長のリチャード・ロイド・パリー氏にも話を聞くことに。断続的に連絡をとる。ご両人ともに快諾していただく。

 明日、急遽日帰りで鳥取県の平井伸治知事に話をうかがえることになる。夕刻、新橋でAさん。Cディレクターと。誠実な対応。

 21時54分、旭川の親友Mから電話が入る。自分にとって、かけがえのないものは本当は何なのかを知る。沈思黙考せよ。

 河井克行被告の被告人質問が続く。河井被告の中で起きた変化に関心が向く。一体何があったのだろうか。近藤ようこ『死者の書』(上)を遅ればせながら読み魅了される。

 今月いっぱいで赤坂の金松堂書店が閉店する。中華料理店の「榮林」に続いて、もう自分の知っている赤坂はほとんど消えつつある。そして、ひとも。

3月25日(木) 朝9時の便で鳥取へ。10時半過ぎに鳥取着。空港から市内でTディレクター、Nカメラマンらと合流。久しぶりに仕事を一緒にしたTディレクターはダイエットに励んだとのことで、めっちゃスマートになっている。

 まずは鳥取砂丘へ。背広ネクタイ姿で来たので、観光地では、めっちゃ浮いている。思ったよりはたくさんの観光客が砂丘に来ていた。砂丘はいいなあ。人間のちっぽけさみたいなものを教えてくれる。写真家・植田正治の鳥取砂丘を撮影場所としたシュールな作品群が大好きだ。それを思い出した。たまたま砂丘観光に来ていたスリランカからの留学生グループに話を聞いた。陽気な一団だった。

鳥取砂丘には観光客が100人くらいいた=撮影・筆者鳥取砂丘には観光客が100人くらいいた=撮影・筆者

 移動中に電話が入る。コロナのワクチン問題に絡んで、貴重な情報が入る。ファイザー社製ワクチンの輸送をめぐって、冷凍なのか冷蔵なのかで実は今、大問題が起きているのだが、それが隠蔽されている、と。これはワクチン接種の有効性そのものに関わってくる致命的に重要な問題なのだが、厚労省がスルーして逃げようとしているというのだ。すでに「練馬区モデル」が破綻しかかっているという。輸入されたワクチンを、冷凍からいったん冷蔵にして運搬することは、ファイザー社自身が推奨できないとしているにもかかわらず、日本ではなぜか冷蔵用のクールボックス様の運送容器4万箱をすでに発注してしまっているのだという。6億8000万円をかけて。さらに2万5000個、追加発注も行われる。厚労省に巣食う利権の臭いがするような気がする。

 13時30分から鳥取県庁で平井知事へのインタビュー。鳥取、島根の両県はコロナ対策で国とは一定の距離をおき、県知事の強いイニシアティブが発揮されて、感染拡大の抑え込みに成功しているとされている。平井知事の話はなかなか建設的かつ切実なものだった。聖火リレーをコンパクトにして浮いた費用をコロナ苦の飲食店の救済に回すと。聖火リレーの費用は2日で9000万円。そのほとんどは警備費だという。大都会のように「協力金」さえ得られない地方として、プライドをもった独自のコロナ対策を実施していると自信をのぞかせていた。

 今日中に東京に戻りたいと思っていた。というのも、東京五輪開催に反対する市民らのデモが今夜、東京であるからだ。ここから米子空港に直行すると、デモ取材に何とか間に合う計算だ。17時20分米子発、18時45分羽田着。ちょうどその時刻にデモが新橋をスタートして、組織委員会のある晴海トリトンスクエアの解散地点まで1時間半くらいの行程だから、途中からなら何とか間に合う。

 デモ現場までの車中でテレビをみていたら、NHKが聖火リレー開始祝賀特番をやっていた。宇宙飛行士の野口聡一さんやら、全国の聖火ランナーやら増田明美さんやら、とにかくお祝いだった。すると車がデモ現場に追いついた。このテレビのなかの映像と、デモの人々との頭がくらくらするほどの落差。

 デモはものすごい数とはいかないが、「逆風」下で200人以上の人々が行進していた。マスコミの取材はこの段階ではゼロだった。僕は自分のスマホで撮影しながらデモと一緒に歩いていたら、何と雨宮処凛さんがデモのなかにいた。「あら、金平さん」。声をかけられ軽く話をした。歩道にはデモにぴったり並走するように、公安警察官が数十人(?)歩いていた。

NHKの聖火リレー祝賀番組よりNHKの聖火リレー祝賀番組より=撮影・筆者
NHKの聖火リレー祝賀番組より=撮影・筆者NHKの聖火リレー祝賀番組より=撮影・筆者
東京五輪反対デモの人々=撮影・筆者東京五輪反対デモ=撮影・筆者
東京五輪反対デモの人々東京五輪反対デモ=撮影・筆者

東京五輪反対デモの人々=撮影・筆者東京五輪反対デモ=撮影・筆者
 考えてみたら夕食を食べそこなっていたな。もうどこの店もやってない。

 早稲田の新入生向けに動画を送ろうとして数々のトラブル。まいったなあ。沖縄辺野古の南部戦跡の土砂の件。宗教者の方から情報が入る。取材すればするほど酷い話だ。

 明日の朝の在東京の海外特派員インタビューの準備。ちょっとばかり疲れたな。

「子午線の祀り」に、想像力が心地よく解放されていく

3月26日(金) 早朝に局へ。イギリスのタイムズ紙のリチャード・ロイド・パリー東京支局長と、旧知のフィガロ紙のレジス・アルノー記者に、東京五輪の開催の是非についてインタビュー。パリー記者は、1995年以降、ながく日本に駐在する。明晰な五輪中止論者だ。アルノー記者は、今となってはやるしかないのだろうとの立場。パリー記者は、東日本大震災の被災地に何度も足を運び、被災住民の取材を続けてきた記者。アルノー氏は、カルロス・ゴーンの事件の取材で知り合っていた。

 2人は、ある意味では日本人以上に、東京五輪の開催の是非について冷静に判断できる立場なのだと確認できたように思った。アルノーさんは1964年東京五輪当時の秘蔵のフランスの雑誌「パリ・マッチ」誌を何冊か持ってきてくれた。とても面白い。オリンピックは当時と今では明らかに変質した。何を隠そう、僕自身は

・・・ログインして読む
(残り:約1848文字/本文:約4325文字)