菅政権に対する有権者の不満が表れた結果か。総選挙に向けて自民、立憲はどう動く?
2021年04月26日
参院長野選挙区と衆院北海道2区の補欠選挙、参院広島選挙区の再選挙が4月25日に投開票され、自民党が長野と広島で野党候補に競り負け、候補者を出さなかった北海道2区と合わせて「3敗」となった。
今回の補選・再選挙は、新型コロナウイルス対策で苦戦している菅義偉政権の評価が問われたとともに、今秋までには行われる衆院の解散・総選挙の行方を占うものと言える。「全敗」は菅政権に対する有権者の不満が表れただけでなく、民意の地殻変動が起きているとも読み取れる。選挙結果と今後の政治の動向を読み解いてみよう。
投票結果は以下の通りだ。
・衆院北海道2区:当選=松木謙公氏(立民、元)59664票 次点=鶴羽佳子氏(無所属、新)27355票
・参院長野選挙区:当選=羽田次郎氏(立民、新)415781票 次点=小松裕氏(自民、新)325826票
・参院広島選挙区:当選=宮口治子氏(無所属・野党系、新)370860票 次点=西田英範氏(自民、新)336924票
衆院北海道2区の補選は、同区選出の吉川貴盛衆院議員(自民)が農林水産相在任中に鶏卵業者から500万円の資金提供を受けたとして収賄罪で在宅起訴され、議員辞職したことに伴う選挙。自民党は収賄事件を「反省する」として公認候補の擁立を見送り、「不戦敗」となった。
参院長野選挙区は、立憲民主党の現職だった羽田雄一郎元国土交通相の死去に伴う補選。羽田氏の実弟の次郎氏が出馬し、「弔い選挙」となったことから羽田氏優勢とみられていた。
参院広島選挙区は、2019年の参院選で河井案里候補(自民)が大規模な選挙違反(買収)を犯したとして有罪が確定、選挙が無効になったことに伴う再選挙。自民党は「出直し」を掲げて経済産業省の官僚だった西田氏を擁立したが、「お詫び」から始まる選挙は有権者から評価されなかった。
3選挙とも自民党には不利な状況下だったため、「全敗はやむを得ない。菅政権への影響は深刻ではない」という声は自民党内から多く聞かれる。しかし、一連の選挙結果は、自民党の足元が揺らいでいる表れとも見える。
菅政権のコロナ対策が後手に回り、3回目の緊急事態宣言が出されたが、収束の見通しは立たない。安倍晋三政権での「桜を見る会」をめぐる公私混同をはじめ、河井克行元法相・案里夫妻の選挙違反事件、菅首相の長男が絡んだ総務省の接待スキャンダルなど不祥事は後を絶たない。コロナ禍で経済格差が広がっていることもあり、国民の不満はマグマのようにたまっている――。
こうした状況が国政選挙での自民党の敗北につながったことは間違いない。
予兆はあった。
3月に投開票された千葉県知事選。千葉市長から転じ、立憲民主党などが推した熊谷俊人氏が140万票を獲得。自民党推薦の元県議・関政幸氏に100万票以上の大差をつけて圧勝した。自民党支持層の多くが熊谷氏に投票したことは明らかで、自民党支持層の変化を示した。
この選挙期間中、立憲民主党の中村喜四郎元建設相は、千葉県内の中堅の建設会社を回った。中村氏はかつて、自民党の田中・竹下派に所属。党総務局長として選挙の実務を担当し、建設業界とのパイプも築いた。千葉県内の建設会社にも顔が利く。「こんどの知事選、熊谷さんが強いんですよ。おたくもぜひ、協力してほしい」と話しかけた。もともとは自民党支持の建設会社だが、中村氏の呼びかけに「考えてみます」と応じたという。
野党が選挙で自民党を倒すには、野党陣営の支持固めだけでは足りない。自民党の足元を突き崩して野党側に取り組むしかない。中村氏はそう思い定めて自民党に揺さぶりをかけ、千葉県知事選では手ごたえを感じた。そして、いまは総選挙に向けた戦略を練っている。
思い返せば、自民党が民主党に大敗し政権を失った2009年の総選挙では、多くの自民党支持者が民主党に投票するという前代未聞の出来事が起きた。各種の世論調査が明らかにしたのは、自民党支持者の3割が民主党候補に投票するという驚愕のデータだった。
当時、自民党本部の選対関係者が、こう解説してくれた。
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