戸籍制度の不備を暴いた柏木(妻)・想田(夫)の「夫婦別姓確認訴訟」判決
社会やメディアに根付く「夫が主で妻が従」意識が、選択的夫婦別姓実現を阻んでいる
想田和弘
僕と妻の柏木規与子は、1997年、米国のニューヨーク市で正式に結婚した。
アメリカを含む日本以外の国では、結婚の際に「夫婦別姓」か「夫婦同姓」を選択することができる。結婚によって同化・融合するというより、お互いの違いやルーツを尊重しながら仲良くやっていこうと思っていた僕らは、迷わず「別姓」を選んだ。
僕も柏木も自分の名前で仕事をしてきたことも、別姓を選んだ大きな理由の一つだった。映画作家として活動してきた僕にとっても、映画プロデューサー・舞踊家・太極拳師範として活動してきた柏木にとっても、名前はすなわち「ブランド」であり、それを変更することにはデメリットしかない。
日本の国内法同士が矛盾している
少なくとも僕は自分の名前を変えたくなかったし、これから生涯のパートナーとなる人に、自分が嫌だと思うことをお願いするのも嫌だった。
しかし周知の通り、日本で婚姻届を出す際には氏を統一しなければ受理されない。したがって、僕らは夫婦としての戸籍を新設することができない。
一方で、日本の通則法第24条には、「婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による」と定められていることを知った。つまりニューヨークの法律にのっとって行われた僕らの婚姻は、日本国内でも有効なはずなのだ。
これはどう考えても、日本の法律同士が矛盾している。僕らの戸籍が作成されないのは、戸籍制度の不備であろう。その結果、僕らは税制や相続などで不利益を被りうるのだ。
そう考えて、2018年6月、僕と柏木は「夫婦別姓確認訴訟」を提起し国を訴えた。代理人は夫婦別姓訴訟弁護団。みなさん手弁当のボランティアである。
そして4月21日、その判決がついに東京地裁で出された。

米国在住の映画作家・想田和弘さんと妻の柏木規与子さんは米国で別姓で結婚。日本では同姓でないと届けが受理されず、夫婦としての地位確認などを求める訴訟を東京地裁に起こした=2018年6月18日