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戸籍制度の不備を暴いた柏木(妻)・想田(夫)の「夫婦別姓確認訴訟」判決

社会やメディアに根付く「夫が主で妻が従」意識が、選択的夫婦別姓実現を阻んでいる

想田和弘

「婚姻は成立している」

 判決文で裁判長は、通則法第24条を根拠に「婚姻自体は成立していると解するほかない」と明記し、僕らが日本でも法律的な夫婦であることを認定した。

 僕らの請求自体は退けられたので、形式的には「敗訴」である。

 しかし訴訟の一番の目的は、米国での僕らの婚姻が、日本でも有効であることを裁判所に「確認」してもらうことにあった。そういう意味では、実質的には「勝訴」であると肯定的に受け止めている。

 実際、婚姻が有効であることを明確に断定してもらって、個人的には相当にホッとしている。というのも、裁判で国側は「お前らは氏を統一していないから、結婚は成立していない。だからどちらかが死んでも相続もできない」と主張していたからだ。

 その暴力的とも言える主張を法廷で実際に聞いたときには、かなりギョッとしたし、ショックだった。このまま国の主張が認められてしまったら、僕と柏木は法的には赤の他人だということになってしまう。20年以上の結婚生活が、全否定されてしまう。それは不条理を超えて、一種の恐怖だったのである。

 だから裁判長が国側の主張を明確に否定してくれたことは、当然とはいえ、本当によかったと思う。それに通則法24条は海外で同性同士が結婚する場合にも適用されるはずで、そういう意味では同性婚の法制化を進める上でも意味のある判決なのではないか。

ニューヨーク市庁舎での人前結婚式=1997年12月26日拡大ニューヨーク市庁舎での人前結婚式=1997年12月26日


筆者

想田和弘

想田和弘(そうだかずひろ) 

映画作家。1970年、栃木県足利市生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業。ニューヨーク・スクール・オブ・ビジュアル・アーツ映画学科卒業。日米を往復しながら、ナレーションやBGMや台本を排した「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。監督作品に『選挙』『精神』『Peace』『演劇1』『演劇2』『選挙2』『牡蠣工場』『港町』『ザ・ビッグハウス』などがあり、海外映画祭などで受賞多数。最新作『精神0』はベルリン国際映画祭でエキュメニカル賞を、ナント三大陸映画祭でグランプリ受賞。著書に『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』『観察する男』『熱狂なきファシズム』など多数。最新刊は『なぜ僕は瞑想するのか ヴィパッサナー瞑想体験記』(ホーム社/集英社)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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