社会に迎合してきた韓国メディア
――著書では、市民団体の力が増していった背景に、韓国メディアの問題があったと指摘されています。それは一つのタブー視、聖域視されてきたためだと。

ソウルの日本大使館近くで開かれる「水曜集会」に参加する「正義記憶連帯」の尹美香前理事長=2020年3月25日、東亜日報撮影
「そうです。メディアが社会的な雰囲気に迎合し、支援団体を批判の対象から外してしまっていました。これはメディアとしての明らかな職務遺棄であり、私は今、後悔しています。
本の中で、日本に関する報道には二つの『自己検閲』があったと書きました。一つは、日本を利する記事であり、もう一つは日本に厳しい団体を批判する記事。いずれも書くことが難しかったのです。前者はかなり改善されてきましたが、市民団体批判は困難なままでした。 『尹美香事件』は最後の聖域を崩したと言えます。
そもそも韓国メディアが初めから聖域なしに取材執筆するという役割を果たしていれば、今回のような事件そのものが起きていなかったでしょう」
「私は韓国における慰安婦問題は、日本の拉致問題に似ていると思います。ともに国が関与して人権を脅かした問題であり、国際的なテーマに飛び火しました。長い間、被害者が大きな声を出せずにいて、加害者に善処を訴える点も似ています。被害者を支援する組織に対し、たとえ異論があっても、正面から批判するのは難しいのは日本でも同じことではないでしょうか」
――出版後、韓国社会の反応はどうですか。支援団体からの反応や問い合わせ、抗議などがありましたか。
・・・
ログインして読む
(残り:約3398文字/本文:約5231文字)