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慰安婦運動の「聖域」崩れ、歴史を理性的に見る時

東亜日報元編集局長、沈揆先さんに聞く

箱田哲也 朝日新聞論説委員

社会に迎合してきた韓国メディア

 ――著書では、市民団体の力が増していった背景に、韓国メディアの問題があったと指摘されています。それは一つのタブー視、聖域視されてきたためだと。

拡大ソウルの日本大使館近くで開かれる「水曜集会」に参加する「正義記憶連帯」の尹美香前理事長=2020年3月25日、東亜日報撮影
 「そうです。メディアが社会的な雰囲気に迎合し、支援団体を批判の対象から外してしまっていました。これはメディアとしての明らかな職務遺棄であり、私は今、後悔しています。

 本の中で、日本に関する報道には二つの『自己検閲』があったと書きました。一つは、日本を利する記事であり、もう一つは日本に厳しい団体を批判する記事。いずれも書くことが難しかったのです。前者はかなり改善されてきましたが、市民団体批判は困難なままでした。 『尹美香事件』は最後の聖域を崩したと言えます。

 そもそも韓国メディアが初めから聖域なしに取材執筆するという役割を果たしていれば、今回のような事件そのものが起きていなかったでしょう」

 「私は韓国における慰安婦問題は、日本の拉致問題に似ていると思います。ともに国が関与して人権を脅かした問題であり、国際的なテーマに飛び火しました。長い間、被害者が大きな声を出せずにいて、加害者に善処を訴える点も似ています。被害者を支援する組織に対し、たとえ異論があっても、正面から批判するのは難しいのは日本でも同じことではないでしょうか」

 ――出版後、韓国社会の反応はどうですか。支援団体からの反応や問い合わせ、抗議などがありましたか。

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筆者

箱田哲也

箱田哲也(はこだ・てつや) 朝日新聞論説委員

1988年4月、朝日新聞入社。初任地の鹿児島支局や旧産炭地の筑豊支局(福岡県)などを経て、97年から沖縄・那覇支局で在日米軍問題を取材。朝鮮半島関係では、94年にソウルの延世大学語学堂で韓国語研修。99年からと2008年からの2度にわたり、計10年、ソウルで特派員生活をおくった。13年4月より現職。翻訳した『慰安婦運動、聖域から広場へ』(沈揆先著、朝日新聞出版)が2022年1月刊行された。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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