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「政治改革」の残された課題 企業団体献金全面禁止がいま必要な理由

今もなくならない「政治とカネ」の問題。私はなぜこの課題にこだわるのか

落合貴之 立憲民主党衆院議員

 国内外に課題が山積する今、政治はそうした課題にどう向き合い、どうやって解決すればいいか――。現役の国会議員が、それぞれ関心のある分野について、課題とその解決策について論じるシリーズ「国会議員、課題解決に挑む~立憲民主党編」。初回は落合貴之衆院議員の論考です。テーマは「政治とカネ」。政治の宿痾ともいえるこの課題の本質はどこにあるのか。解決は可能なのか。自らの経験を踏まえて論じます。コメント欄にぜひ、ご意見をお寄せください。(論座編集部)

根の深い「政治とおカネ」の問題

 先月、参議院の二つの県(長野、広島)と衆議院北海道2区で選挙(補欠選挙と再選挙)が行われました。結果は、野党候補がすべての選挙で勝利しましたが、三つの選挙のうち二つが、自民党の現職議員による「政治とおカネ」の問題が原因となった選挙でした。

 政治とおカネは、古くから続く問題ですが、今なお続いている。この問題の根の深さをあらためて感じます。

 とはいえ、決して諦めていい課題ではありません。むしろ私はこれこそが政治改革の要諦だと思い定め、企業団体献金の全面禁止を実現するべく努めてきました。なぜ私はこの問題にこだわるのか。その理由を、1990年代以来の政治改革の経緯を振り返りつつ説明し、克服する道を考えたいと思います。

Bankrx/shutterstock.com

「政治活動に年1億円余り」という異常

 1989年3月4日の朝日新聞の記事が私の手元にあります。「政治活動に年1億円余 自民1年生代議士10人が収支公表」という見出しの記事は、「政治とおカネ」をめぐり国民の間で政治不信が高まるなか、自民党の若手議員でつくる「ユートピア政治研究会」(会員20人、座長は後に新党さきがけ代表となる武村正義氏)が、当選1回生10人の政治資金収支を公表したことを伝えています。

 それによると、議員一人の平均支出額は、1億2000万円近く。内訳を見てみると、冠婚葬祭費1666万円、地元のお祭りやイベントへのお祝い金など後援会活動費1890万円が目立ちます。

 当時、私は小学生。政治家を取り巻く現実がどうだったのか知りようもありませんでした。ただ、政治家に対しては、時代劇に出てくる悪代官といった、あまりよくない印象を持っていたのは記憶しています。

 今から30年以上前、バブルがはじける直前で、日本中をマネーが飛び交っていた時期ではありましたが、選挙とは別に、普段の政治活動のために、国会議員になったばかりの1回生議員たちが、年に1億円という巨額な支出をしているのは異常です。

政治家と企業がからむ政治とカネの事件が続発

 ここで見逃してはいけないのは、1億円を使うには1億円の収入がないといけないということです。それだけのお金を政治家はどうやって集めていたのか。当時の政治家の収入の内訳を見ると、多くが「政治献金」で集められています。そして、この頃、大きな問題になったのが「企業団体献金」でした。

 企業や色々な利益団体が、政治家に多額の献金をする。政治家の資金集めパーティーのパーティー券を買ってあげる。この新聞記事に載っている1回生議員の収入先を平均すると、政治献金が約5400万円。パーティー収入が約2000万円でした。

 献金したり、パーティー券を買ってくれたりする企業団体は、みなさん善意で、政治家にお金を渡しているのでしょうか。必ずしもそうではないと思います。何か、見返りを期待して、政治家にお金を渡す。政治家も、それに答える。そうして、税は公平に使われなくなる。世の法律は公正に機能しなくなる。

 実際、この頃、リクルート事件をはじめ、国会議員と企業がからむ政治とおカネにまつわる事件が次々と起きていました。こうしたカネまみれといってもいいような政治に対して国民の怒りは高まり、「政治改革」が政治の大きな争点となったのです。

中途半端だった政治資金規正法

 その最中に行われた1993年の総選挙の結果、政治改革をめぐって分裂した自民党が40年近く担ってきた政権を失い、野党の連立政権である細川護熙内閣が誕生しました。細川内閣では衆議院に小選挙区制を導入する選挙制度改革とともに、政治資金規正法が改正され、5年後に企業団体献金を禁止するという旨も明記されました。

 ただ、そこにはその後「抜け道」がつくられました。確かに、政治家個人に対する企業団体献金は禁止されました。しかし、政党や政党の支部に対する献金は認められたのです。

 2000年2月28日の朝日新聞の社説がここにあります。「そこら中に政党支部が 企業献金」という見出しの記事によると、東京都議会の自民党議員50人が一斉に政党の支部を設立した。目的は、企業団体献金を受け取るためとあります。

 政治家たちは自分たちで作った法の抜け道を利用して、政党の支部を作り、自らその代表になって、企業団体献金を再び受け取るようになりました。この頃、政党の支部が一気に増えています。そして今、自民党には、企業団体献金を受け取れる政党支部が7000以上あります。それぞれの支部の代表者に、国会議員や自治体議員がつき、企業団体献金を手にしています。

 政治改革の実現を求める民意を受けて成立した細川内閣で、企業団体献金は禁止するという法律をつくったにもかかわらず、5年後の実行段階では(そのときは、自民党政権に戻っていました)、素知らぬ顔で抜け道がつくられ、今に至っているわけです。

Princess_Anmitsu/shutterstock.com

企業団体献金全面禁止法案を提出したが……

 企業団体献金の全面禁止を求める動きもありました。調べてみると、民主党政権時代に、企業団体献金を全面禁止させる方向で議論が進み、2011年3月10日に最終案が党の部会を通っています。

 しかし、不幸なことに、その翌日はまさに東日本大震災の日。原発事故や津波被害への対応でドタバタするうちに、この件は棚上げとなってしまいました。もしあの時、企業団体献金が禁止されていれば、その後の日本政治の風景は大きく変わっていたと思えてなりません。政治家を取り巻く一部の企業のためではなく、国民のための政治へと。

 国民のための政治を実現するために、「政治改革」の時代に成し遂げられなったことを成し遂げなければならない。より良き政治を求めた当時の熱い民意を、ないがしろにしてはいけない――。

 2014年の衆院選で初当選した私は、本気でそう思定め、企業団体献金を全面禁止するための議員立法作りに奔走しました。2017年には、所属する民進党の承認も得て、国会への提出に至りました。しかし、与党の賛同は得られず、いまだ審議には至っていません。

政治家に都合の良いルール?

 政治改革が叫ばれてから30年。政治腐敗をなくすための法律がつくられ、政治家たちが選挙区内のあらゆる冠婚葬祭に顔を出して多額のご祝儀やお香典を配ることや、あらゆるお祭りやイベントに顔を出してお祝いを配ることに制限がかかるようになり、政治家が選挙区内にお金をばらまくことはだんだんとなくなってきました。

 しかし、お金の「入り」の部分、つまり企業団体による献金や政治資金パーティーのパーティー券購入は、いまだに違法ではなく、堂々と行われています。政治家がお金を配ることは禁止したのに、お金をもらうことは禁止しない。非常に政治家に都合のいいルールではないですか。

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