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注目される「バーチャル株主総会」の行方

コロナ禍で広がるデジタル対応の課題

塩原俊彦 高知大学准教授

 日本でもっとも多い3月期決算企業の定時株主総会はその多くが6月に開催される。4月26日に東京証券取引所が発表した「2021年3月期決算会社の定時株主総会の動向調査」によると、招集通知のウェブ(TDnet)開示を総会開催日の3週間以上前に行う会社は74.1%と過去最高水準になる。

 「バーチャル株主総会」とも呼ばれる、オンラインによる株主総会の開催を予定している会社は232社で、全体の14%と、昨年に比べて8.8ポイント増加する見込みだ(「表1 バーチャル総会の開催予定」を参照)。まだまだ低水準だが、コロナ禍の株主総会をデジタル化によってうまく対応できるようにする動きが広がりつつあるのはたしかだ。そこで、ここではこの問題を中心に考えてみたい。

表1 バーチャル総会の開催予定

経産省の旗振り

 このバーチャル株主総会の旗振り役を務めてきたのは経済産業省である。2019年8月、「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」の第一回会合が開かれた。将来的にはバーチャルオンリー型総会の実現をめざしつつ、バーチャル総会を推進するための準備にかかわる検討が行われるようになったのだ。

 2020年2月になって、企業がハイブリッド型バーチャル株主総会を実施する際の法的・実務的論点と、その具体的取扱いを明らかにした「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」が公表されるに至る。ハイブリッド型には、株主総会への法律上の「出席」を伴わずに、インターネットなどの手段を用いて審議等を確認・傍聴する「ハイブリッド参加型」と、株主総会の場所に在所しない株主がインターネットなどの手段を用いて株主総会に会社法上の「出席」をすることができる「ハイブリッド出席型」という2種類があり、リアルな株主総会も想定されているため、ハイブリッド(混合)型と呼ばれている。

 法務省は2020年5月15日、新型コロナウイルス感染拡大を考慮して、その日から6カ月以内に招集手続きが開始される定時株主総会に限りウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡充した(詳しくは「法務省が省令改正、株主総会資料のオンライン提供について」を参照)。2021年1月、法務省はこの措置を9月末まで延長することとした。バーチャル総会のための下地が整えられたことになる。

低調だった2020年6月のバーチャル総会

 2020年6月の株主総会では、上場会社のうち「ハイブリッド出席型」99社、「ハイブリッド参加型」 は 113 社で実施されたという(三菱UFJ信託銀行調べ)。

 2020年10月13日になると、日本経済団体連合会(経団連)が「株主総会におけるオンラインの更なる活用についての提言」を公表した。そのなかで興味深いのは、経団連が「バーチャルオンリー型」の有用性を認める立場にたっている点だ。

 提言では、「アメリカでは30州で認められており、ドイツやシンガポールでもコロナ禍での臨時措置により認められることとなった」という注をつけて、「諸外国ではバーチャルオンリー型がすでに実現」していると

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