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国民投票法をめぐる17年(上) 改憲に反対だから法改正に反対する護憲派のおかしな論理

国民投票が有害かのような印象操作は慎むべきだ

今井 一 ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

常識的な案を通すのに3年を費やす

 衆議院の憲法審査会において、自民・立憲・公明・国民各党議員の賛成多数で可決された国民投票法の改正案は、5月11日に本会議で可決された。この後、同案は参議院に送られ、6月半ばまでに成立する見込みだ。

衆院本会議で国民投票法改正案が可決され、自民党の議員から声を掛けられる衆院憲法審査会の細田博之会長(中央)=2021年5月11日午後1時14分、上田幸一撮影 拡大衆院本会議で国民投票法改正案が可決され、自民党の議員から声を掛けられる衆院憲法審査会の細田博之会長(中央)=2021年5月11日午後1時14分、上田幸一撮影

 今回の改正内容は、公職選挙法には設けられていながら国民投票法にはない7項目の規定を盛り込むもので、例えば、地域の小学校など事前に決められた投票所とは異なる「共通投票所」を駅の構内やショッピングセンターなどに設置できるといった常識的なものだった。にもかかわらず、なぜ成立までに3年もの年月を費やしたのか。それは、野党第一党の立憲民主党が、この改正案の審議や採決に応じないという姿勢をとり続けたからだ。

 立憲は、「テレビCM」の規制など広告規制に関する議論を先行させるべきで、憲法そのものに関する議論はそのあとでやるべきだと主張。一方、自民、公明、国民、維新の各党は、後先をつけずに両方の議論をすればいいという姿勢をとってきた。だが、ここに至って立憲が方針を転換。国民投票の広告規制などについて、「施行後3年をめどに法制上の措置を講じることを改正案の付則に盛り込むこと」を条件に採決に応じた。

 枝野代表、福山幹事長、安住国対委員長ら立憲執行部の思惑はおよそ次のようなことなのだろう。

 [憲法改正の発議⇒国民投票の実施]に反対しているいわゆる護憲派の人々の票(支持)を得たいし、次の衆院選において一定の選挙区で協力関係を築くことになる共産党とこの件で争いたくもない。だが、憲法を御真影のように扱い、議論することさえタブーとする政党だと受け止められては、広範な有権者の支持を得られない。

 そこで、考えついたのが、「自分たちは憲法について議論することを拒んでいるのではなく、広告規制を国民投票法に盛り込んだ後にその議論に応じる」という構えを見せることだ。それによって、立憲は「憲法議論もしっかりやりますよ」と広範な有権者に見せつつ、護憲派の人々や共産党には「当分の間、改憲論議に応じることはない」と弁明ができる。そして、おそらくこの構えは党内調整にも有効なのだろう。

 立憲執行部のそうした策を「知恵が働く」と評価する政治通がいるかもしれないが、私には、確固とした理念や哲学によってではなく目先の損得で立ち回る人たちと映る。「知恵が働く」というより「小賢しい」。

 それは、2017年9月の前原・枝野両氏による民進党代表選直後に、当時、人気急上昇中だった小池百合子氏が立ち上げた希望の党へ一同そろってなだれ込もうとした動きと同じ。支持率を落とし続けていた彼らは、あの時も目先の損得で動いた。その際、小池氏に「排除」された枝野氏や福山氏らが意を決して結党した立憲民主党が、その後、民主党、民進党時代の同僚議員を大勢取り込み、今や衆参合わせて154議席を擁する中堅政党になった。

 この先、自公両党に代わって政権を担おうというのなら、今後は、国民投票法の改正や憲法論議について、政局や目先の損得に囚われない堂々たる姿勢をとってほしい。

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筆者

今井 一

今井 一(いまい・はじめ) ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

 1991年以降、ソ連、ロシア、スイス、フランス、イギリスなどで国民投票の取材を重ね、国内では新潟県巻町、名護市、徳島市など各地で実施された住民投票を精力的に取材。2006年~07年には、衆参各院の憲法調査特別委員会に参考人及び公述人として招致され、国民投票のあるべきルールについて陳述する。著書に『CZEŚĆ!(チェシチ)──うねるポーランドへ』(朝日新聞社)、『住民投票』(岩波書店)、『「憲法9条」国民投票』(集英社)、『国民投票の総て』、『住民投票の総て』(ともに[国民投票/住民投票]情報室)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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