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赤木雅子さんと小泉今日子さんに会う

[238]赤木雅子さんのご自宅、近畿大学付属・十三市民病院、吉村府知事……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

4月14日(水) 午前10時半に神戸のホテルをチェックアウト。午前11時過ぎ、新神戸駅で取材クルーと合流。C、T両ディレクターに加え、Mカメラマン・クルーという盤石の態勢だ。そのまま市内の赤木雅子さんのご自宅にうかがう。雅子さん宅にうかがうのは実は今日が2回目だ。初めてうかがったのは去年の4月20日のことだった。だからほぼ1年前だ。

 12時17分、取材開始。お宅の中は、1年前の記憶と比べると、雑然としていた状態からかなり片付けが進み整理されていた。近畿財務局元職員・赤木俊夫さんが自死した居間もかなり様子が変わっていた。壁に絵も飾られている。「転居を考えたことはないですか」と尋ねたら「家をあけると夫が寂しがるんじゃないかと思って、ここに住み続けます」ときっぱりとした言葉が返ってきた。

 居間で僕らはじっくりと話をうかがった。近畿財務局での公文書改ざん作業をやらされていく生々しい経過をあらためて聞く。日曜日の午後、公園で一緒に過ごしていたら、直属の上司の池田統括官(当時)から電話で呼び出された時のこと。その後、自死の際に残されていた手書きの遺書や、パソコンに保存されていた改ざんに関する文書。近畿財務局の人々のその後の雅子さんに対するさまざまな対応のありよう(手記を見せてくれと言われた等)。訊いていてつらくなる内容だった。

 俊夫さんの自室には、趣味の書道の道具(筆や墨)が今も保管されていた。大好きだったという坂本龍一の雑誌記事や関連物をコレクションした「坂本ファイル」も残されていた。初めてみた。さらには手帳に挟まれ擦り切れた公務員倫理カードも。スマホで撮影されたうつ病を発症した後の俊夫さんの様子。自傷行為を繰り返す映像もあった。つらい。

 撮影の際は雅子さんと同定できないように顔を撮らない「紳士協定」のようなものがマスコミ各社との間でできている。僕らもそれに従っているが、僕はどうしても撮っておきたいことがあった。それは雅子さんの瞳だ。こんな撮り方は報道のストレート・ニュースでは絶対にやらないのだが、僕は何とかそれを撮りたいと思って雅子さんと相談した。瞳だけを撮った画面は、さまざまなことを物語ってくれると思った。とりわけ雅子さんは相手をしっかりと見つめて話をする人なので、そのことが心に刻まれていたのだ。しかもその瞳の映像だけからは雅子さんの顔を同定=identifyできない。それで雅子さんにも納得していただき撮影することにした。

 赤木さん宅では実に濃密な時間が流れた。それは赤木さんの自宅でなければ起こりえない時間の流れだった。報道の仕事をしていて、こういう経験はそんなに頻繁にあることではない。3時間ちかくお邪魔して辞去し、僕をのぞくみんなは東京にその足で戻って行った。

赤木俊夫さんの写真とともに記者会見に臨む妻の雅子さん=2021年3月18日午後1時1分、大阪市北区20210318拡大国などに損害賠償を求める訴訟を起こして1年、赤木俊夫さんの写真とともに記者会見に臨む妻の雅子さん=2021年3月18日、大阪市北区

 僕はと言えば、そのまま居残り、大阪のコロナ感染急増でひっ迫する医療現場を取材することになった。もう1泊する準備を全くしてきていないのでまいった。とりあえず宿を押さえなくては。大阪に移動。コンビニで下着を買う。

 バイデン大統領、9・11までにアフガニスタンからアメリカ軍を完全撤退させると。何気なくホテルでテレビをつけたら、先月まで『クローズアップ現代+』のキャスターをつとめていた武田真一さんがNHK『ニュース きん5時』という夕方の柔らかめの番組に出ていた。東京と連絡して、Hディレクターに明日の取材の概要を聞く。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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