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国民投票法をめぐる17年(下) CMの公平性保てず、冷静な議論を妨げるおそれも

護憲・改憲を問わず、主権者としてルール改善の提案を

今井 一 ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

有料CMを禁止する諸外国の論理は

 スイス、フランス、イタリア、イギリスなどは、国民投票時に政党や企業・団体、個人が新聞広告を出すことは認めていても、テレビやラジオで有料のCMを流すことは禁止している。かつて私は、スイス、フランスの放送局や新聞社に赴き、そのことについて編集・編成スタッフらの意見を聞いたことがある。そうしたルールに異議はない、納得していると答えた人の理由は以下のようなものだった。

 広告とはいえ「言論・表現の自由」を制限するのはよくないので、多少不公平となっても新聞広告は自由に認めればいいが、15秒~30秒といったテレビやラジオのスポットCMは規制すべきだ。放送CMは国民投票の対象となっている案件についての理性的認識を促すものではなく、「刷り込み」「マインドコントロール」をもたらす危険がある。

 おそらく、イギリスやイタリアも同じような理由で有料の放送広告(CM)を規制していると考えられる。

EU離脱を問う英国の国民投票で、残留派の集会に乱入した離脱派の市民=ロンドンで拡大EU離脱を問う英国の国民投票で、残留派の集会に乱入した離脱派の市民=ロンドンで

 だが、「言論・表現の自由」の観点から、テレビCMを含めて規制に反対している学者や言論人も少なくない。日本国内では、例えば山田健太(専修大学文学部 ジャーナリズム学科教授)がそうで、放送広告(CM)を規制すべきか否かは、今後も院の内外で議論を重ね、日本初の国民投票実施までに結論を出すべきだ。

「意見表明」広告なら禁止ルールに抵触しない

 投票日の14日以内であっても、「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」ではなく、単に個人や団体として意見を表明するものであれば、運動としての広告放送(CM)ではなく意見表明広告だとして流すことが法的には可能となる。

 例えば、矢沢永吉や木村拓哉はテレビCMの中で「やっちゃえNISSAN」と言うが「日産の車を買ってくれ」とは言っていない。今、テレビで流れているCMのなかで、売りたい商品が洗剤であれ、食品であれ家電であれ、起用したタレントに「買ってください」と言わせるものなんてほとんどない。プロが作るCMというのはそうなのだ。

 そしてそれは国民投票の際のテレビCMでも同様で、プロ中のプロである大手広告代理店がCMの制作を担い放送を仕切ることになるのだから、「賛成に投票して」「反対に投票して」といった単純なCMを作りはしない。

 おそらく、著名な芸能人やスポーツ選手などを起用して「私は賛成。改めたほうがいいよね」とか「私は反対。護りたいなあ」とか言わせるのだろう。

 そうした内容なら、視聴者に「賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する」ものではないので、投票日14日前からは放送不可というルールには抵触しない。たとえ投票日当日であっても流すことはできる。現行法の下では。

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筆者

今井 一

今井 一(いまい・はじめ) ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

 1991年以降、ソ連、ロシア、スイス、フランス、イギリスなどで国民投票の取材を重ね、国内では新潟県巻町、名護市、徳島市など各地で実施された住民投票を精力的に取材。2006年~07年には、衆参各院の憲法調査特別委員会に参考人及び公述人として招致され、国民投票のあるべきルールについて陳述する。著書に『CZEŚĆ!(チェシチ)──うねるポーランドへ』(朝日新聞社)、『住民投票』(岩波書店)、『「憲法9条」国民投票』(集英社)、『国民投票の総て』、『住民投票の総て』(ともに[国民投票/住民投票]情報室)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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