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コロナ禍のもとで障がい者、高齢者の命が軽視され、「命の選別」が進んでいる

選別を止め、生きられる社会をつくるために声を上げるふたりの訴え

松下秀雄 「論座」編集長

「希望しない」といわなければ、搬送してもらえない

 松下)自分の意思にもとづいて治療しないのであれば、それでよいという考え方もあると思います。どう考えますか。

 古賀)「延命を希望している」といったら入院先が決まらず、病院に運んでもらうためにやむなく「希望しない」と答えたという報道もあります。いろんな圧力の中で、治療を諦めざるを得ない人が出てくる可能性は非常に大きいと思います。

 意思確認の方法にも問題があります。川崎市の担当者に、どうやって意思確認をするのか聞くと、それぞれの施設に任せてあるというのです。厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」で、本人が家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合うことを求めています。施設に任せているということは、おそらくそういう形式もとっていないでしょう。神奈川県のある精神科病院は入院者の家族に対して、「万が一重症化した場合は看取りに切り替えることがある」と記した同意書へのサインを求めたそうです。

「トリアージのガイドライン」を求めた杉並区長

 古賀)こういう事実上の命のふるい分けとともに、命をふるい分けるための制度のようなものをつくれという人たちがいます。中でも、行政の責任者である杉並区長が言い出したことに、私は強く危機感をもちました。

 【注】 田中良・杉並区長は小池百合子東京都知事に対し、「現場の限界を超える患者が医療機関に押し寄せた場合、このままでは現場医師に生命の選択を強いることになります。この状況を回避するためには、国・都が協力し、重症者に対する人工呼吸器をはじめとした医療機器の装着に関するトリアージガイドラインを策定する必要があります」とする緊急要望を1月8日付で提出した。
 さらに、1月11日公開の文春オンラインのインタビューでは、「『この人から人工呼吸器を外して、あの人に付けないといけない』という判断を現場の医者に押し付けていいのか」と語り、年齢ごとの「生還率」や「死亡率」、基礎疾患との関係などのデータをもとに、人工呼吸器などをつけても延命にしかならないケースや、救える患者の傾向を探り、ガイドライン化するという方法を例示した。

田中良・杉並区長=2018年5月21日、杉並区拡大田中良・杉並区長=2018年5月21日、杉並区
 鷹林)いままででも、医学界などでこうした動きがあるのは知っていましたけど、行政の長が公然と言い出した。これはたいへんだということで、議会を傍聴したりしてきました。区長の発言を聞くと、ぜったいに引っ込めないぞという姿勢がぐいぐい感じられるんですよね。ならばこっちも引っ込むわけにはいかない。その一環として、「杉並区長の『トリアージ』発言から命の大切さを考える」というシンポジウムを、5月23日に企画しています。

 【注】 14時から、杉並区高円寺の高円寺障害者交流館で。ZOOMでの参加も可能。主催は障害者福祉を考える杉並フォーラム。参加申し込みや問い合わせは suginamiforum123@gmail.com へ。

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筆者

松下秀雄

松下秀雄(まつした・ひでお) 「論座」編集長

1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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