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コロナ禍のもとで障がい者、高齢者の命が軽視され、「命の選別」が進んでいる

選別を止め、生きられる社会をつくるために声を上げるふたりの訴え

松下秀雄 「論座」編集長

「命を切る」ことで、医療の逼迫を防ぐ矛盾

 松下)医療が逼迫しているのは事実です。子どもや若者の命を救えなくていいのかという声は、素朴な感情として出てきそうな気もします。こういう声をどう感じますか。

 古賀)政治や行政に責任を負う人がまずとりくむべきは、医療体制の拡充ですよ。それなのに、命を選別するための順位づけをしようと言い出し、命を切ることで医療の逼迫を避けようとする。これはほんとうに危ない。

 今度の変異ウイルスは、若者も重症化しやすいといわれています。子どもや若者の命を救うためにも、早く感染をみつけ、軽症者もふくめて医療を保障する体制を整備しなければならない。それによって、すべての人を助けることになっていくんじゃないでしょうか。

 松下)今回は突然、大地震が起きてトリアージを強いられるようなケースとは違います。すでにコロナ禍が始まって1年以上たっていて、その間に医療提供体制や検査の拡充など、いろんなことができたはずですね。

 古賀)そうです。このコロナの前から、医者はたいへんな状況におかれていました。32時間連続で勤務しても違法じゃないなんておかしいでしょう。もっと医者の数を増やし、ちゃんと休める条件をつくっておかなければならなかった。日本の感染者は、欧米に比べれば1桁も2桁も少ないのに医療崩壊が起きてしまう。そんな状況をつくったことがおかしいのです。

東京消防庁が実施した大規模テロ対策訓練で、トリアージエリアでけが人の状況確認をする消防職員ら=2018年10月27日、東京都品川区拡大東京消防庁が実施した大規模テロ対策訓練で、トリアージエリアでけが人の状況確認をする消防職員ら=2018年10月27日、東京都品川区

回復するかどうかは、年齢からはわからない

 松下)杉並区長の提案について、ほかにどんな問題を感じていますか。

 古賀)区長は、年齢や基礎疾患に応じた生還率や死亡率をもとに、ガイドラインをつくる考えを示しています。しかし、同じ年齢でも、同じ持病をもっていても一人ひとりの状態は違う。昨年、オランダで107歳の方がコロナに感染し、症状が出て回復されたという報道がありましたが、回復するかどうかは年齢からはわかりません。治療にあたる医師でなければ判断できないと思います。

 これが進むと、医者も関与しないまま、行政が決めた基準に基づいて、「この人はもう80歳だから」「この人は70代だけれど持病もあるから」、あるいは「障がい者だから」救命しないということになるんじゃないか。患者にとっては一回の人生であり、たったひとつの命です。機械的に振り分けるなんてことは許せません。

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筆者

松下秀雄

松下秀雄(まつした・ひでお) 「論座」編集長

1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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