長期的戦略がなく昭和型政治が続く日本。教育に注力、地方ビジョンを示す新たな政治を
新型コロナによって、日本の社会が抱えてきた根の深い課題があらわになっています。それは、不平等や雇用、女性などの社会問題、ITやデジタルディバイドといった社会基盤にかかわる問題、危機管理や民主主義のあり方をめぐる問題など、多岐にわたります。
こうした現実を前に、政治は何をするべきか。政治家は克服する道を示すことができるのか。「論座」では、政治の当事者である政治家とともに、課題解決を視野に「論考」を展開することにしました。今回は国民民主党の4人の議員、玉木雄一郎さん、前原誠司さん、大塚耕平さん、舟山康江さんに、継続的に寄稿をお願いします。
それに先立ち、今の政治をどう見るか、どんな課題に着目し、社会をどう変えていきたいかなど、座談会で語っていただきました。(司会 論座編集部・吉田貴文)
玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)
1969年香川県生まれ。東京大学法学部卒業、ハーバード大学大学院修了。1993年大蔵省入省。外務省などを経て、2009年衆院選で初当選、4期目。現在、国民民主党代表。著書に『令和ニッポン改造論』(毎日新聞出版)、『#日本ヤバイ』(文藝春秋)
前原誠司(まえはら・せいじ)
1962年京都府生まれ、京都大学法学部卒業。(財)松下政経塾入塾、京都府議を経て1993年衆院選で初当選、9期目。民主党代表、国土交通相、外相、国家戦略担当相、経済財政政策担当相、民進党代表などを歴任。現在、国民民主党代表代行 兼 安全保障調査会長
大塚耕平(おおつか・こうへい)
1959年愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒業。日本銀行入行、在職中に早稲田大学大学院博士課程修了。2001年参院選で初当選。4期目。内閣府副大臣、厚生労働副大臣を歴任。現在、参院国家基本政策委員長、国民民主党代表代行、経済調査会長、税調会長。
舟山康江(ふなやま・やすえ)
1966年埼玉県生まれ。北海道大学農学部卒業。農林水産省に入省。2007年の参院選で初当選(山形県選出)。2期目。農林水産大臣政務官、参議院国会対策委員長などを歴任。現在、国民民主党政務調査会長、農林水産調査会長。
――新型コロナウイルス感染症、マイナス成長の経済への対応など様々な課題が押し寄せ、支持率の低下が目立つ菅義偉政権ですが、野党の議員として現状をどう見ていますか。
玉木 昨年から1年以上、コロナへの対応に追われているわけですが、菅政権だけの問題ではなく、日本政治の有事対応の弱さが露呈しています。
大きく二つの問題があります。
一つは「司令塔」の不在です。菅政権は縦割り行政の打破を掲げていましたが、コロナ対策も担当大臣が複数いて縦割りで進められる。そのため優先順位がつけられず、対応が後手後手になっています。もう一つは、財政当局が財政赤字にこだわるあまり、対策が小出し、後出しになっている点です。緊急事態宣言下の支援策もいかにも中途半端です。
要するに、平時の感覚のまま有事対応をしているわけです。これは日本のシステム全体の問題だということも真摯(しんし)に見つめ、改めるべきところは改めていかないといけません。
前原 菅首相にトップリーダーとしての覚悟が感じられないのが、一番の問題だと思います。記者会見も原稿の棒読みで、国民の窮状を理解し、乗り越えていこうという覚悟が伝わらない。ワクチン接種の遅れに不満はあるけど、この人がいうなら仕方がない、みんなで力を合わせてがんばろうということになっていない。リーダーが本当に国民のことを思っているかどうかを、危機の時には国民は肌身で感じるものです。
菅政権の支持率が下がり、不支持率が上がっているのは国民の不安の裏返しだと思います。ワクチン接種がある程度いき渡れば、支持率はまた動くでしょう。
舟山 私も、菅政権がどこまで現場に寄り添う覚悟をもっているのか疑問です。思いつきのように、7月末までにすべての高齢者の接種を終わらせるため、1日100万回ワクチンを接種すると言う。根拠を示して発言すればいいのですが、そうではないので安心感をもたらすどころか、不安と混乱を招いていると思います。
柔軟性のなさも菅さんの特徴です。学術会議の問題も、一回ダメだと言えばどんなに状況がかわってもこだわり続ける。カーボンニュートラルにしても、これ一本やりではなく、地球環境の持続的な維持という観点から他の面も考えないといけません。カーボンニュートラルという枕詞をつければ何でも通るというのも、柔軟性のなさのように見えます。