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マクロン大統領の東京五輪出席は「蛮勇」か~開催を当然視するフランスの空気感

ワクチン接種拡大で支持率もアップ。日本は「国賓訪問」をするべきリストの最優先国

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

洒落て見応えがある力士が登場するPR動画

 日本では、マクロンの訪日のほかに、五輪を中継する国営テレビ「フランス・テレビ」のスポーツ局が流したPR動画が話題を呼んでいるという。大相撲の力士と北斎風の版画を巧みに組み合わせた図柄で、「日本は五輪の準備ができました。フランスTVも同様です」とのナレーションが入る。

 1分間の動画の冒頭は、縁側に座った着物姿の力士の後ろ姿だ。茶飲み茶碗などが置かれた盆が傍らに置かれ、短冊には「心を静める」との日本語の文字がみえる。試合前に一服して心を静めているらしい。続いて褌(ふんどし)姿の力士が全力疾走したり、棒高跳びや3段飛びをしたりする躍動感溢れる動画が流れ、「全身全霊」「負けを認めず」などの日本語の文字も流される。さすが、芸術大国フランス。洒落ていて見応えがある。

拡大「フランス・テレビ」のスポーツ局が流したPR動画に描かれる力士のイラスト(「フランス・テレビ」のサイトから)

 大相撲といえば、1986年に初の「パリ大相撲」が開催され、パリ市長時代のシラク元大統領を魅了した。シラクは1995年、大統領就任と同時に同年秋に2回目の「パリ大相撲」開催を決めたほどだ。以来、髷(まげ)を結った「力士」は、日本の版画や浮世絵とともに、日本文化を象徴するものになった。

 つまり、フランスではマクロン大統領もフランスのテレビ局も「五輪開催」を信じて疑わず、着々と準備を進めているということだ。

「外出禁止」を乗り越えウキウキのフランス国民

 大統領が支持率アップでニコニコ顔なら、国民も今、ウキウキしている。5月19日には半年ぶりにカフェ、レストランのテラス部分、映画館、美術館、大型商店などが扉を開けた。大統領も同日、カステックス首相とエリゼ宮(仏大統領府)近くのカフェのテラスでコーヒーを飲んで見せ、写真付きのツイッターを流した。

 フランス人が今、ウキウキしているのは、厳格で辛い「外出禁止」を乗り越えたという一種の達成感も含まれているように見える。シャンゼリゼ大通りから人影が消えた時期もある。1年に人口(約6600万)を上回る約9000万人が訪れる観光大国の面影もなく、経済は第二次世界大戦直後を超える落ち込みをみせた。そこから、難業苦行のマスクもして、なんとか「コロナ禍」を乗り越えたという達成感だ。

 ただ、カフェやレストランのテラス開店といっても、「密」を避けるために、極めて厳格な規制が敷かれている。カファやレストランのテラスの収容人数は定員の50%、1テーブルの人数は最高6人(個人宅の室内での会食も6人制限)。映画館、劇場は収容人数制限の上限は定員の3分の1、1ホール最大1000人(当初発表は800人)、全商店、デパートなどは客1人当たり8平方メートルを確保、名物の朝市など屋外の場合は1人当たり4平方メートルだ。カフェやテラスのテーブルの間隔は1メートルだから、5月19日の開店前には、ボーイが巻き尺片手にテーブルの間隔が1メートルになるように測っていた。

拡大密を避けるために入店制限があり、シャンゼリゼ大通りにあるルイヴィトンの店の前で並ぶ人たち=2021年5月22日、パリ

 今後、「外出禁止令」は6月9日、6月末と段階的に解除され、レストランの中での食事も可能になり、収容人数制限や時間制限なども緩やかになる。午後7時から午前6時までの「夜間外出禁止」は5月19日からは午後9時から、6月9日からは午後11時からになり、6月末には徹夜でのどんちゃん騒ぎも許可される予定だ。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト

元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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