大濱﨑卓真(おおはまざき・たくま) 選挙コンサルタント
1988年生まれ。青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。衆参国政選挙や首長選挙をはじめ、日本全国の選挙に与野党問わず関わるほか、「選挙を科学する」をテーマとした選挙に関する研究も行う。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
首相が高齢者へのワクチン接種を急ぐ本当の理由とその可能性
いよいよ衆院議員の任期満了まで5カ月となりました。新型コロナウイルス感染症の影響で、実質的に解散権が拘束されているような状況の菅政権ですが、いずれにせよあと数カ月で衆院総選挙を行わなければならなりません。
当然ながら、解散総選挙の時期を菅義偉総理(解散は総理の専権事項と言われます)がどう選ぶのかに注目が集まります。筆者はこの時期について、高齢者を対象としたコロナワクチン接種の進み具合に大きく依拠すると考えています。どういうことか? 以下で説明します。
衆議院の解散・総選挙の時期については、この春にも、あるいは東京都議選との同日選といった説も一時、取り沙汰されました。春は何ごともなく終わり、都議選と同日もさすがに無理。現時点では東京オリンピック・パラリンピック閉幕後の9月解散が濃厚とされています。
菅総理は自らの自民党総裁の任期中の総選挙に積極的とも言われています。そこで、9月7日解散・9月21日公示・10月3日投開票という日程が候補として上がっています。
総裁選を行った後に解散総選挙ということであれば、9月20日に総裁選の投開票が行われた後に、新総裁による首班指名と組閣を経て、9月27日解散・10月12日公示・10月24日投開票という日程が浮かび上がってきます。
この二つの日程の差は「わずか3週間」です。とはいえ、衆議院の解散・総選挙を自民党総裁選の前にやるか後にやるかという意味で、極めて大きな違いがあります。
菅総理は、前述の通り、自身の総裁任期中における解散・総選挙に積極的とされますが、そのためにはクリアしなければならない条件があります。選挙のバロメーターとも言われる内閣支持率です。
現況を見ると、内閣支持率はコロナ感染状況と反比例しています。つまり、感染が増えると支持率が下がり、減ると上がる。全国各地で緊急事態宣言が発令されるなど、感染が高止まりしているなか、内閣支持率は低い水準にとどまっています。
菅総理としては、国民の人気が高く、党員票を多く獲得する可能性がある河野太郎ワクチン担当大臣が自民党総裁選で優位に立つことも想定し、総裁選前に解散・総選挙を行い、勝敗ラインを自民党過半数などと低めに設定することで、取りあえずの勝利をつかんだうえで、「民意を受けた結果なのだから、総理総裁を変える必要はない」という大義名分を持って、総理総裁としての二期目に突入するシナリオを描いているのではないでしょうか。
そのためには、内閣支持率を上昇機運に転じたいところですが、そこで効果的と見られるのがワクチンです。そこから、解散風が吹く8月末までには、少なくとも高齢者のワクチン接種がほぼ終わるようにしたという胸算用がでてくるわけですが、それにはどの程度の可能性があるでしょうか。
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