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菅首相はいつ衆院を解散するのか~総裁選の前?後? 高齢者ワクチン接種がカギ

首相が高齢者へのワクチン接種を急ぐ本当の理由とその可能性

大濱﨑卓真 選挙コンサルタント

高齢者接種の進捗は順調か

 ここでワクチン接種の進捗状況を見てみましょう。菅総理や河野担当相の発言からすると、菅政権が現在のところコミットしているのは、「7月末」という時期です。以下にその根拠を示します。

その上で、接種のスケジュールについては、希望する高齢者に、7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終えることができるよう、政府を挙げて取り組んでまいります。
(令和3年4月23日 新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見)
(問)3600万人の高齢者の2回分の接種を終える時期にお変わりはありますか。
(答)7月末というところです。
(問)一部報道で、7月末に1000以上の自治体が高齢者向けのワクチン接種を終えるという回答があるという報道があるんですけれども、政府としては7月末にどの程度の高齢者向けワクチンの接種終了を見込んでおられるのか。
(答)7月末までに高齢者2回分の接種を終えるというのを念頭に置いております。
(令和3年5月7日 河野内閣府特命担当大臣記者会見要旨)

 上記の言葉からは、国としては7月末までに、高齢者2回分の接種を終えるためのワクチンを供給するが、後は自治体の処理能力に依存するという姿勢も垣間みえます。5月13日に公明党の石井啓一幹事長らが菅総理と会談した際、「9月、10月までかかる自治体がある」と伝えると、首相は「え、そんなに遅れるところあるの!」と驚いたという朝日新聞の報道がありましたが、首相サイドにすれば、東京五輪や総選挙もからみ、なんとか7月末までにという、焦りにも似た気分があるのが正直なところでしょう。

 しかしながら、高齢者接種は当初の想定よりも遅れていると指摘をせざるを得ません。筆者が作成した下記のグラフは、首相官邸が公開している接種記録を棒グラフにして、菅総理の発言にあった「1日100万回接種」を目標値1として緑色ラインに、「高齢者に2回接種=7200万回」を目標値2として黄色ラインで示したものです。

拡大

 高齢者接種数は確かに増えていますが、必要な目標に対して依然、大きく届かない状況であることがわかります。5月24日に公表された数字でみても、5月23日までに1回目の接種が終わった高齢者は216万人と、高齢者全体の10%にも届きません。直近7日間の(1回目)接種平均数で単純計算すれば、1回目の接種が終わるのは209日後、ほぼ年末となってしまいます。

 仮に今の2倍の接種ペースを明日から確保できたとしても、1回目の接種が終わるのは104日後、これでも今年の9月5日ということで、東京五輪・パラリンピック閉幕と同じ頃になります。自衛隊による大規模接種センターの開設や、都道府県による大規模接種センターの開設を政府が急いだ最大の理由は、ここにあります。

拡大「自衛隊大規模接種センター」の視察を終え、記者の質問に答える菅義偉首相(右)。左端は岸信夫防衛相、中央は中山泰秀防衛副大臣=2021年5月24日、東京・大手町、代表撮影

ワクチン接種が遅れた理由は

 ワクチンの接種が遅れている理由には様々な事情が挙げられていますが、私は政府が7月末という目標を無理に立てたのが、一番大きな理由だと思います。

 当初、多くの自治体は高齢者の接種完了を「8月末」と見込んでいました。けれども、菅首相は「6月末」という無理筋まで検討し、河野ワクチン担当大臣の説得も聞かずに「7月末」に決定したという経緯があったことを読売新聞が報じています。

 菅首相のほぼ独断で決まった「無理筋の目標」を追いかけることになった各自治体が、医療従事者などのリソース確保を焦ることになったのは明らかです。その結果、自治体ごとにオペレーションにばらつきが出ることになりました。

焦点は東京五輪からワクチン接種へ

 これまで国民が高い関心を示す政治的課題は、東京五輪開催の可否でした。国民の多数が中止、ないしは再延期を求めているにもかかわらず、誰もブレーキを踏む人がいない状態のまま、東京五輪開催へ突き進んでいるのが現状です。

 東京五輪を中止した場合の経済的逸失利益と国民の安全安心を天秤にかけるような事態は、ある意味では「トロッコ問題」的と言えるでしょう(参照:「トロッコ問題」)。

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筆者

大濱﨑卓真

大濱﨑卓真(おおはまざき・たくま) 選挙コンサルタント

1988年生まれ。青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。衆参国政選挙や首長選挙をはじめ、日本全国の選挙に与野党問わず関わるほか、「選挙を科学する」をテーマとした選挙に関する研究も行う。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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