メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

政府とIOCは、国民が納得できる五輪開催案示せ~できないなら中止しかない

しかし中止の壁は高い。それを乗り越える「国民運動」は起こるのか

登 誠一郎 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

コロナ禍の開催で「世界平和」に寄与できるか

 第一の原則(オリンピックと世界平和)に関しては、コロナ禍で人と人との交流ができない状態では、開催のメリットは発揮できない。しかしこの原則から、直ちに開催不可という結論が出るのではなく、その判断は、開催のもたらす「生命と健康の危険」という巨大なデメリットを如何に最小限化できるかによる。

 そのための最善の方策は、大会の形式を最大限簡素化し、さらに関係者の数を最大限縮小したうえで、感染防止策を徹底することである。

 感染防止の切り札であるワクチン接種状況については、現在日本はOECD加盟国37カ国中の最下位、世界では120位以下と大きく出遅れている。政府の意図は、7月末までに高齢者(約3600万人)の接種を終了し、それから基礎疾患のある人に進むことだが、一般成人の接種がいつ開始していつ終了するかは明確な見通しも出されていない。

 これに比して、ワクチン接種が進展している欧米諸国では、感染者の増加率が大きく低下しており、総感染者数が580万人に迫るフランスでも、また450万人に迫る英国でも、最近は人口比で見た一日の感染者数が日本より少なくなっている。

拡大コロナワクチンの大規模接種が各地で始まっている。会場の体育館では受付(左)に列ができていた=2021年5月24日、愛知県豊明市の藤田医科大
拡大各国から遅れているワクチン接種率を高めるため、歯科医師会の協力が各地で進んでいる。事前の研修で肩に置いた模型に注射を打つ歯科医師=2021年5月30日、長野市

大きく遅れたワクチン施策。交流できず「平和推進」は不可能

 これらの諸国は、昨年の春ごろからワクチン手配の準備を始めたのであり、他方その頃はGo Toキャンペーンという筋違いの政策を追及していた日本が、ワクチン接種のスタート時点で約半年遅れ、その結果ワクチン効果が十分に発揮される前に、オリンピックを迎えることになるのは、単なる不運として片づけるのではなく、厳格な検証の必要がある。

 感染防止対策を如何に徹底しても、感染が収束しない限り、人と人との交流は行えないため、「オリンピックによる世界平和の推進」という第一原則は、残念ながら達成できない。したがって、この原則に関する限りは、開催の意義はないということになり、それを覆すためには、「アスリート・ファースト」の第二原則が、その結論を大きく上回る意義とメリットがあることを実証する必要がある。

拡大東京五輪・パラリンピックに向けた5者協議であいさつする大会組織委員会の橋本聖子会長。右は丸川珠代五輪相。オンラインで参加したのは(左から)東京都の小池百合子知事、IOCのバッハ会長、IPCのパーソンズ会長=2021年3月3日、東京都中央区

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

登 誠一郎の記事

もっと見る